「五感」を越えて、人の感覚を問い直すプロジェクト──人の感覚は「33」ある?

人は何を感じ、どう世界を受け取っているのか──最新研究と中医学の視点から

目次

🧠 感覚は、思っているよりずっと多い

私たちは五感で世界を感じている、と長く考えられてきました。ただ、空腹や動悸、身体の傾き、居心地の良し悪し──これらは確かに「感じて」いるのに、五感のどこにもきれいには収まりません。

こうした疑問から生まれたのが、ヨーロッパで進められた研究プロジェクト「感覚を再考する」です。

この研究は、「感覚とは何か」という前提そのものを問い直しました。哲学と神経科学が連携し、人の知覚体験を全体として捉え直そうとした点が特徴です。

感覚を丁寧に拾い上げていくと、五感ではなく、「33」もの感覚を持っている可能性を示しました。

このプロジェクトは、身体の内側の感覚を重視する中医学の考え方とも、方向性が重なる部分があります。

まずはこの研究がどのような問題意識から始まったのかを見ていきます。


🤔 なぜ「五感」では足りないのか

五感という考え方は、感覚を説明するうえで分かりやすい枠組みでした。ただ、その分かりやすさの裏で、うまく説明できない感覚もあります。

例えば、目を閉じていても、自分の腕や脚がどこにあるかは分かります。電車や車に乗ったときに感じる揺れや傾きも、目や耳だけの働きではありません。空腹や吐き気、動悸のような感覚も、外の刺激というより、身体の内側からの感覚です。

こうした感覚は、特別なものではなく、日々感じているものです。それでも長い間、五感のどれかに当てはめて説明されてきました。この研究プロジェクトは、そうした無理のある整理を続けるより、感覚の捉え方そのものを見直す必要があると考えました。

感覚を細かく分けて整理するのではなく、実際の体験に近い形で理解する。その発想が、「五感だけでは足りない」という考え方につながっていきます。


🤝 感覚は一緒に働く

この研究でのもう一つ示されたのが、感覚はそれぞれ単独で働いているわけではなく、複数の感覚が重なり合って成り立っているということです。

例えば味は舌だけで感じているわけではなく、香りや見た目、音まで関わっています。映画を見るときも同じです。映像と音は別々に届いているはずなのに、私たちはそれを一つの体験として受け取っています。

身体の感覚も同様です。触れて感じる感覚は、視覚や身体の位置感覚と結びついています。目を閉じた途端に動きにくくなるのは、触覚だけではなく、複数の感覚が協力して身体を支えているからです。

こうした日常の体験を丁寧に見ていくと、「感覚を一つずつ切り分けて理解する方法には限界がある」ことが分かってきます。

この研究は、感覚を分解するよりも、どう組み合わさって働いているかを見ることが大切だと示しました。


🌱 中医学の視点

この研究の考え方は、中医学の身体観と重なる部分があります。

中医学では、身体を単純な部品の集まりとしては見ません。外からの刺激と、身体の内側の変化がつながり合いながら、人の状態が形づくられると考えます。

たとえば、食欲がない、眠りが浅い、気分が落ち着かないといった変化は、どれか一つの感覚だけで説明できるものではありません。身体の内側の感覚、外からの刺激、心の状態が影響し合って現れます。

五感を中心に据える考え方では、こうした変化は見えにくくなりがちです。一方、感覚を広く捉える視点に立つと、「なぜ今こう感じているのか」を、身体全体の状態として考えやすくなります。

この研究が示した「感覚は多く、しかも一緒に働く」という見方は、中医学が大切にしてきた身体の捉え方とつながります。

最新の研究が、昔からの知恵に近づいてきた、と考えることもできます。


📝 感覚を広く捉えることが、日常を助けてくれる

「五感」という考え方は、世界を理解するためのこれまでの「指標」でしした。

ただ、この研究が示したように、人の感覚はもっと多様で、身体の内側や動きに関わる感覚まで含めて考えると「33」ほどになります。

この見方に立つと、体調や気分の揺らぎを「どこが悪いのか」と捉えるのではなく、今感じている感覚は、身体全体が何かを伝えようとしているサインとして受け取れるようになります。

感覚を広く捉えることは、自分の体を細かく管理することではありません。むしろ、「今日はこう感じている」「今はこういう状態なのだ」と気づく余地を広げることです。その余地があるだけで、体との向き合い方は少し楽になります。

最新の研究が示したこの視点は、中医学が大切にしてきた身体観とも自然につながります。

「感覚」は全体として受け止める──その視点は日常のセルフケアや、自分をいたわる判断を支える心強い土台になってくれるはずです。

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