「ショート動画依存」を科学と中医学で読み解く

目次

🌀 脳がハマる「沼」の正体


ちょっとだけ動画を見ようとアプリを開いたつもりが、気づけば何十分も経っていた──そんな経験がある方も多いと思います。

SNSやショート動画の「沼」にはまる人が増えていますが、なぜ私たちは次々と動画を見続けてしまうのでしょうか?

実は、「沼る」のには脳と心の奥には、私たちを引き込む「しくみ」が隠れています。

今回紹介する研究では、その謎を脳科学・心理学のアプローチで紐解いていきます、

さらに中医学の視点でも解説。

きっと読み終わるころには、ふだんの自分の行動も、ちょっと違った目で見えてくるはずです。「気づけば時間が消えていた」という日々を減らすヒントも得られるかもしれません。


🧠 みんなハマる「ショート動画」の魔力

最近では、スマートフォンを開けば一瞬で始まるショート動画。これらのアプリは「すぐ見られる」「次々におすすめされる」「止まらない楽しさ」と、どこまでもユーザーの好みに合わせて動画を見せてきます。

研究によると、中国では10億人以上が日常的にショートビデオを利用し、平均して1日151分も動画を見ているそうです。

これはスマホゲームに費やしている時間の3倍近くになります。

この短くて強い刺激が繰り返されることで、脳は「もっと見たい」と感じやすくなり、つい「やめ時」を見失いやすくなっていきます。

気がつけば「やめたいのにやめられない」という状態に陥ることになります。


🧩 依存の裏にある「損失回避」の変化

「損をしたくない」「失敗したくない」と思うのは、多くの人が持つごく自然な気持ちです。心理学ではこれを「損失回避」と呼び、人はふつう「損」をできるだけ避けたいと考えやすいものです。

しかし今回の研究では、ショート動画を長く見続けることで、この「損を避けたい」という慎重な気持ちが少しずつ弱まっていくことが分かりました。

たとえば、普段なら「ちょっと危ないかも」と思ってやめておくような場面でも、「まあ大丈夫」「今が楽しいから」と「損のリスク」をあまり深く考えずに決めてしまう傾向が強まっていました。

研究で行われたテストでも、ショート動画に夢中な人ほど、「損」を気にせず、リスクのある選択もためらわずに受け入れることが多くなっていたのです。

つまり、楽しさや目先の刺激が優先されてしまい、ふだん持っているはずの「慎重さ」や「危険へのブレーキ」がかかりにくくなる──こうした心と脳の変化が、データとしてもはっきり表れていました。


🔬 「脳」にも現れている変化

行動の変化は、実は「脳」の変化としても現れています。今回の研究では、ショート動画依存が強い人ほど、「楽しさ」や「ごほうび」を感じる脳の一部(楔前部/けつぜんぶ)の反応が弱まることが見つかりました。

一方で、「損」や「危険」を感じる場面では、体の動きや感覚に関わる小脳や中心後回という場所が、普通よりも活発に反応していました。

これは、「危ないかも」と思っても、一度立ち止まって考えるよりも、体がすぐに反応してしまう状態に脳が変わっていることを意味します。

慎重さよりも「すぐに行動してしまう」傾向が強くなり、リスクのある選択にもブレーキがかかりにくくなっていたのです。

こうした脳の変化が、「やめられない」「ついリスクを取ってしまう」という行動パターンにつながっていることが、研究で明らかになりました。


🚦 「証拠蓄積」のスピードアップと意思決定

今回の研究では、「ドリフト拡散モデル(DDM)」という少しユニークな方法が使われています。これは、人が何かを決めるとき──たとえば、「今日は宿題をするか、ゲームをするか」と迷うとき、頭の中でいろんな情報や気持ちを少しずつ集めながら、最終的に「これにしよう」と決める、そのプロセスを数字で表すものです。

このモデルでは、「証拠を集めるスピード」と「決断までに必要な証拠の量」がポイントになりますが、今回の研究で特に明らかになったのは、「証拠を集めるスピード」がショートビデオ依存の強い人ほど速くなっていた、という点です。

つまり、何かを決めるときに「深く考える前にパッと決めてしまう」傾向が強まったことが示されました。

普段なら「ちょっと待って」と考える場面でも、動画のリズムに慣れた脳は反射的に次の行動を選びやすくなります。

こうした脳の変化によって、慎重さよりもスピードが優先され、衝動的な選択が増えてしまう──これが今回の研究で明らかになった大きなポイントです。


🕹️ どんな人がハマりやすい? 医学的な評価と注意点

今回の研究で対象となったのは、18歳から24歳の大学生たちです。調べてみると、依存度が高いグループでも、性別や親の学歴、家庭の収入などに大きな違いはありませんでした。

つまり、特別な条件がなくても、誰もが日々の環境やストレスなどをきっかけとしてショート動画に「沼りやすい」ということがわかりました。

また、研究で明らかになった「損失回避の低下」や「深く考えずにすぐ決めてしまう傾向」は、実はギャンブルやアルコールといった他の依存症にも共通する特徴です。

医学の分野でも、こうした脳や心の変化は、抑うつや不安、注意力の低下といったさまざまな健康リスクにつながることがわかっています。

だからこそ、普段の自分の行動を少し意識して、ときどきスマホから離れる時間をつくる──そんなちょっとした工夫が、心と体の健康を守るうえで、とても大事になってきます。


🌱 「中医学」から見るショート動画依存の正体

中医学では、心と体は切り離せないものと考えます。ショート動画依存のような「やめたくてもやめられない行動」や「衝動的な決断」は、中医学の視点では「心(しん)」と「肝(かん)」のバランスが乱れているサインとされます。

「心」は、精神の安定や集中、物事を冷静に判断する働きを持ち、「肝」は気の流れや感情のコントロールに関わっています。現代のように刺激が多く、目の前の快楽に心が奪われがちな毎日が続くと、「肝の気」が乱れやすくなります。その結果、イライラしやすくなったり、落ち着きがなくなったりします。

さらに、動画を長時間見続けていると、「血(けつ)」も消耗しやすくなります。中医学では、「心」は体の中で「血」によって支えられ、その「心」が健やかであることで「神(しん)」──つまり精神や意識、気分の安定が保たれると考えます。

こうした状態が続くと、ますます衝動的な行動を抑えにくくなり、悪循環に陥ってしまいます。中医学的なケアとしては、まず「心」と「肝」をしっかり休ませ「血」を補う時間を意識的に作ること、そして深呼吸や自然の中でのんびり過ごして「気」の乱れを整えること、つまり生活リズムを見直すことが、回復への第一歩とされています。


🔔 今、できること、考えたいこと

今回の研究で見えてきたのは、ショート動画依存は単なる「クセ」や「暇つぶし」ではなく、脳や心の働きそのものに影響を与える現象だということです。

依存度が高いほど「損」を気にしなくなり、深く考えずに決めてしまう傾向も強くなる──こうした変化は、普段のちょっとした選択から、大切な人生の分かれ道まで、さまざまな場面に影響を及ぼすかもしれません。

でも、脳や心は「意識的に切り替えること」や「しっかり休ませること」で、ちゃんと回復する力を持っています。

医学や中医学の知恵をヒントに、自分の心と体を少し見つめ直してみる。たとえば、スマホを置いて深呼吸をしてみるだけでも、きっと小さな変化が生まれるはずです。

大切なのは、自分を責めずに「ちょっと立ち止まる力」を持つこと。無理せず、少しずつ──自分なりのペースで、心と体の健康を育てていけるように・・・。


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