💡 「光熱費」を削ると、人はどうなるのか
寒さを少し我慢して、暖房のスイッチに手を伸ばすのをためらう。
夏の暑さのなか、エアコンを使うのを控えてやり過ごす。
そんな日常の選択が、実は心の調子にも関係しているとしたら──多くのものが値上がりしている今、それは小さくない問題かもしれません。
今回紹介するのは、アメリカの大規模な調査データをもとに、「エネルギーを十分に使えない暮らし」と「心の不調」との関係をていねいに分析した研究です。
光熱費を払うために、食費や医療費を削る。冷暖房を使わずに過ごす。そうした生活の背景にあるストレスが、こころや体にどんな影響を与えているのかが、調査結果から明らかになってきました。
中医学では、「気(き)」という見えないエネルギーが体と心を巡り、そのバランスが保たれることで健康が維持されると考えられています。気が不足したり、うまく巡らなかったりすると、不安や気分の落ち込みといった心の不調が現れることもあります。
現代の「エネルギー不安」は、まさにこの気のめぐりが乱れた状態とも重なって見えるかもしれません。
この研究は、そうした影響を明らかにすることを通して、日常生活の見直しや、必要な支援策を考えるうえでの手がかりを得ることも目的としています。
身近な問題から、社会全体のしくみまでを視野に入れた、大切な視点が含まれています。
では、ここから順を追って内容を見ていきましょう。
🤔 「エネルギー不安」ってどういうこと?
「エネルギー不安」という言葉は、あまり聞き慣れないかもしれません。
この研究では、電気やガスなどの基本的なエネルギーを、健康的かつ安定的に使えない状態をそう呼んでいます。たとえば、光熱費が払えなかったり、寒い・暑い環境を我慢して過ごしたり、食費や医療費を削って電気代に充てるといった行動が含まれます。
こうした状態に該当する人は、アメリカ全体で見ても少なくありません。調査に参加した人のうち、少なくとも一度はこのような経験があったと答えた人が、全体の4割を超えていました。つまり、それなりに広く起きている問題だということです。
この研究で用いられたのは、アメリカ政府が実施している「Household Pulse Survey」という調査データです。対象は成人全体で、年齢、性別、収入、住居形態など、幅広い属性が含まれており、一般的な暮らしの実態を反映している点が特徴です。
🧠 うつや不安との「関係」があるのか?
この研究の中心的な問いは、エネルギー不安を経験している人に、うつや不安の症状がどれくらい見られるのか、という点にあります。
ここで使われたのは、PHQ-2とGAD-2という簡易的な質問票です。どちらも過去2週間の心の状態をたずねるもので、精神科の現場でもスクリーニングによく使われています。
調査の結果、
エネルギー不安がある人は、ない人に比べて、うつや不安の症状を感じている割合がはっきり高いことがわかりました。具体的には、不安や落ち込みを訴える人が、およそ2倍程度多くなっていたという結果です。
さらに詳しく見てみると、エネルギー不安のなかでも「生活費を削って光熱費を払った人」に特に強い関連が見られました。
つまり、お金のやりくりに直接的な影響がある場合のほうが、心の不調と結びつきやすい可能性があります。
🧾 「関連」は、どこまで信用できるのか?
エネルギー不安とうつや不安といった心の不調──両者に関連があるという結果が出ても、それが本当に「エネルギーの問題が原因なのか」と疑問を感じる人もいるかもしれません。
この研究では、そうした点にも配慮されています。
年齢、性別、収入、家族構成など、心の状態に関わるさまざまな条件を統計的に調整したうえで、エネルギー不安との関係が検討されました。
さらに、失業や住宅の不安、食料不足などの社会的な困難も含めて解析が行われています。
その結果、これらすべてを考慮したあとでも、エネルギー不安と心の不調との間には統計的に有意な関連が確認されました。
つまり、電気やガスといった生活の基盤が不安定になることが、心理的な負担として表れている可能性があるということです。
一方で、この研究は「ある時点での状態」を切り取った調査であり、時間の流れを追っているわけではありません。
そのため、「エネルギー不安が心の不調を引き起こす」と断定することはできません。
心の不調が先にあり、それが生活の混乱を招いているという可能性も残ります。
それでも、幅広い属性を対象とした全国調査で、両者の関連が一貫して確認されたという点は、見過ごすことのできない結果です。
支援の必要性を考えるうえで、十分に根拠となるデータといえるでしょう。
🏠 日常生活にどう影響しているのか?
エネルギー不安の影響は、単に「電気代が高い」「冷暖房が使いにくい」といった不便さだけにとどまりません。
今回の研究では、エネルギー不安がある人ほど、心の不調を訴える割合が高いことが数字として示されています。
中でも特に強く関連していたのが、「生活に必要な支出を削って光熱費を払っている」と答えた人たちの心の状態でした。このような状況にある人ほど、うつや不安の傾向が顕著に見られたのです。
つまり、エネルギーを節約するだけでなく、食費や医療費などの基本的な支出を減らさざるを得ないこと自体が、心理的なストレスにつながっている可能性があります。
そしてもうひとつ注目されたのが、「不快な室温で過ごしている」という要素です。暑さや寒さを我慢する生活は、体への負担はもちろん、睡眠の質の低下や慢性的な緊張を引き起こしやすいことが知られています。
こうしたストレスの蓄積が、日常生活のリズムや人間関係に影響を及ぼしても不思議ではありません。
エネルギー不安は、暮らしの深いところに入り込み、じわじわと心身に影響を及ぼしていることがわかります。
🌱 中医学の視点から見る「気」とエネルギー不安
中医学では、身体と心の働きを支える基本的な要素として「気(き)」という概念があります。
気は、生命活動を支えるエネルギーのようなもので、体内を循環しながら、感情の安定や免疫のはたらきまでを調整しています。
この気が不足したり、うまく巡らなかったりすると、さまざまな不調が現れます。
例えば気が足りない「気虚」では、疲れやすさ、動悸、気分の落ち込みなどが出やすくなるとされます。
また、気の巡りが滞ると「気滞」といって、胸のつかえやイライラ、不安感などの症状があらわれやすくなるとされています。
今回の研究で取り上げられている「エネルギー不安」は、まさにこの「気」の不足や停滞と重なるところがあります。
外部から得るべき温かさや快適さが足りず、そのことが内側の巡りや調和に影響しているという捉え方もできそうです。
特に「冷暖房が十分に使えない」「生活に余裕がない」といった状況は、気の巡りを妨げ、心身のバランスを崩す要因になり得ます。
もちろん、中医学の視点だけですべてを説明できるわけではありませんが、より広い視野で捉えるヒントになります。
📝 暮らしと心を結ぶ「見えないつながり」
今回の研究は、エネルギーを十分に使えない生活環境が、うつや不安といった心の不調と関連していることを、全米規模のデータを通じて明らかにしました。
光熱費の支払いを優先するために他の生活費を削ったり、不快な室温で日々を過ごしたりする経験は、単なる経済的な困難にとどまらず、心と体のバランスにまで影響していることがうかがえます。
その影響は、個人の努力だけではどうにもならない部分も多く、社会全体で考えていくべき課題です。
中医学の視点からも、気の不足や巡りの停滞が心身に影響を及ぼすことはよく知られており、現代の「エネルギー不安」と重ね合わせることで、理解が深まる面もあります。
研究では、エネルギー不安を見つけやすくし、早めに支援につなげることの大切さにも触れられていました。
こうした視点が医療や地域の支援の中に広がっていけば、暮らしの中の小さな困りごとも、少しずつ解決に向かっていくかもしれません。
エネルギーの問題が心の健康にもつながっていることが見えてきた今、それを「見える化」し、支える仕組みをつくっていくことが、これからの社会にとって大切な一歩になるはずです。
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