📱 「SNSの医療アドバイス」は注意が必要
スマホを開くたび、ダイエット法、サプリ、検査キット、ホルモンの話まで、インフルエンサーの健康情報が流れ込んでいます。
アメリカでは若い世代の7割以上がインフルエンサーをフォローし、そのうち4割以上が、彼らの「これ、いいよ」という一言で実際に商品を買っています。
オーストリアの調査では、15〜25歳のうち8割以上が健康系コンテンツを見ていて、そこからサプリや薬、セルフ検査キットの購入につながっているというデータも出ています。
いま世界の専門家たちは、「この流れをどうやって安全な方向に舵取りするか」を真剣に議論し始めています。
今回研究は、その中でも「インフルエンサーの情報がどのように偏っているのか」「社会として何ができるのか」を検証している内容です。
中医学の視点でみると、情報もまた「からだと心に入ってくる刺激」のひとつです。
過度に不安をあおる健康情報は「心神(しんしん:心の落ち着き)」を乱し、睡眠や食欲に影響すると考えられます。
この研究は、そんな現代の「情報のとり方」を見直すヒントにもつながっていきます。
注意したいのは、内容そのもの以前に「偏りが生まれやすい仕組み」がある点です。
この研究が示した内容を手がかりに、続きを見ていきましょう。
🌐 インフルエンサーは、もう「趣味の発信者」ではない
研究によると、インフルエンサーは今や重要な健康情報源として機能しています。フォロワー数は数千〜数百万規模で、若年層の購買行動にも強く影響しています。
ただし、そのアドバイスの「質」には大きな幅があります。たとえば、医学的に有効性がはっきりしない検査についての投稿を調べた研究では、発信する情報の「87%」がメリットだけを強調し、そのデメリットに触れたものは「15%」しかありませんでした。(現時点でのフォロワー数が約354M(約3億5400万人)の Kim Kardashian がフォロワーにこの検査を勧めた投稿について「利益が証明されていない」うえに、過剰診断(必要以上に病気扱いされる)、不要な介入、費用につながり得ると説明しています。)
また、ドイツのインフルエンサーが宣伝するサプリでは、推奨量の約3分の2が国内の安全基準を超え、7%は欧州食品安全機関の上限を超えていたとされています。
数字だけ見ると少し実感しづらいですが、「10個の投稿のうち8〜9個はメリットばかりを強調し、デメリットに触れていない」「10種類サプリを勧められたら、そのうち6〜7種類は安全ラインを越え気味」ということになります。
この「偏り」が、自己判断での検査・サプリ大量使用・医療費の増大といった問題につながると研究では指摘しています。
🧠 インフルエンサーの「4つのバイアス」が医療アドバイスを歪める
研究では、インフルエンサーの医療アドバイスには、主に4つのバイアス(見方の偏り)がかかっていると整理しています。
1つ目は「専門知識の不足」です。
医師でも医療ジャーナリストでもない人が、全身MRI検査のような専門的検査を「やった方がいい」とすすめることで、過剰診断や不要な検査が増える可能性があります。
2つ目は「企業からの影響」です。
企業からお金や商品提供を受けて、検査キットやスキンケア、処方薬まで宣伝するケースがあります。しかし、広告であることをきちんと表示している投稿は、英国の調査では全体の約57%にとどまるとされています。
3つ目は「起業家としての利害」です。
自分のサプリブランドを立ち上げ、「テストステロン不足」「ビタミン欠乏」への不安を強調する投稿を続けることで、自社製品の販売につなげるパターンです。一部の製品では、鉛など有害物質の含有で警告を受けた例もあります。
4つ目は「個人的な信念」です。
たとえば、ホメオパシーや反ワクチンなど、科学的な裏づけが弱い信念に基づいて、「がんは特定の食事やサプリで治る」といった情報を発信するケースが挙げられています。
こうした4つの偏りが重なったとき、医療アドバイスはかなり危うい方向へ傾く可能性があります。
💬 フォロワーが「つい信じてしまう」仕組み
この研究では、インフルエンサーとフォロワーのあいだにできる、ちょっと独特な「距離感」に注目しています。
インフルエンサーは、自分の体験談や日常を投稿し、コメントにも返すことで、フォロワーにとって「身近な人」のように感じられる存在になります。
こうした関係は、いわば「一方通行の親しさ」とも言えるようなもので、SNSでは特に生まれやすい独特の「距離感」だとされています。
その結果、フォロワーは
- 親しい知人からのアドバイスのように感じる
- 広告であることに気づきにくくなる
- 「この人が言うなら信じてよさそう」と思いやすくなる
といった状態になりやすいとされています。
この「親しさ」と「情報の偏り」が重なることで、気づかないうちに判断をゆがめてしまい、体のことや気持ち、お金の使い方、さらには医療全体への負担にまで影響が広がる可能性があると研究では指摘しています。
🤝 インフルエンサーを「敵」にしないために
研究では、「インフルエンサー=悪」としているわけではありません。むしろ、適切に関われば公衆衛生の味方にもなりうると書かれています。
たとえば一部の医師インフルエンサーは、ピルに関する誤解や、野菜中の「毒」神話、ワクチンの根拠のない副作用情報をわかりやすく訂正しています。
また、患者自身がインフルエンサーとして、偏見や誤解を持たれやすい病気の体験を発信し、安心して悩みを共有できる場をつくっている例もあります。
そのうえで、論文は「悪影響を減らすための具体策」として、次のような案を挙げています。
🏛 政府にできること
- SNSプラットフォームに対して、「反ワクチン情報」など健康リスクのある投稿がどれくらい広がっているかを調べ、報告させる(例:EUのデジタルサービス法)。
- イタリアのように、一定のフォロワー数を超えるインフルエンサーに登録や行動ルールの順守を求める。
- フランスのように、美容整形・ニコチン製品・抗がん剤中止などの発信を制限し、違反者に罰金や禁錮刑を科す。
💻 プラットフォームにできること
- 医療系のファクトチェック団体と連携を強める。
- 医療情報に関するガイドラインを整備する。
- ガイドライン違反があった場合は、投稿停止や広告収益の停止などの対応を取る。
🧑🤝🧑 ユーザーや医療者など、まわりにできること
- SNS利用者が、誤った情報を見つけたときに通報したり、コメントでさりげなく指摘したりする。
- 医師や患者団体が、根拠に基づいた情報を発信したり、安心して話ができる場所をつくったりする。
このように、インフルエンサー本人だけでなく、社会のいろんな立場から「バランスの取れた情報環境」を支えていくことが大切だとされています。
🌱 中医学から見た「情報」の扱い方
中医学では、からだと心は切り離さず、「気・血・津液(体液)」「陰陽」のバランスで全体をとらえます。過度な不安や怒り、焦りなどの感情は、「肝」の気を乱し、睡眠や消化の不調につながると説明されることがあります。
インフルエンサーの健康情報の中には、「今すぐ検査しないと手遅れになる」「これを飲まないと不足している」といった、強い不安を刺激するものが少なくありません。これは、中医学的に見れば「心神をかき乱す情報刺激」とも考えられます。
一方で、根拠に基づいた穏やかな健康情報や、同じ病気を経験した人の落ち着いた体験談は、安心感や自己効力感を高め、「気の巡り」を整える方向に働きやすいと理解できます。
今回の研究が伝えたい「インフルエンサーを建設的な存在にする」という発想は、中医学でいう「バランスを整える」考え方とも相性が良いと感じられます。
情報は、体を整える方向にも、乱す方向にも働きます。だからこそ、自分の心と体の状態に合わせて、どんな情報をどう受け取るかを選んでいくことが大切です。
📌 「情報」に振り回されないために
この研究が伝えているのは、「インフルエンサーを信じるか排除するか」という極端な二択ではありません。
大切なのは、偏りが入り込みやすい構造を知ったうえで、政府、プラットフォーム、医療者、そして私たち一人ひとりが、それぞれの立場でできることを積み重ねていくことです。有害な情報の広がりを抑えながら、信頼できる発信の力はちゃんと活かしていく。そんな多層的な関わり方が求められています。
私たち一人ひとりができることは「広告かどうか」「お金が動いているか」「その人は医療の専門家か」「他の情報とも合っているか」などを落ち着いてチェックし、情報を「そのまま受け取らない」という習慣を持つことです。
中医学の考え方でいえば、「情報の取り方」もまた養生のひとつです。
心と体のバランスを乱さないよう、自分に合ったペースと量で向き合う──それが、今の時代に必要な情報に対する「養生」かもしれません。
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