「つながり」が途切れるとき、記憶に何が起こるのか

目次

🪴 人と人との「つながり」が、記憶の未来に影響を与える?

人とのつながりは、生活の中で少しずつ形を変えていきます。

仕事を離れ、家族の暮らし方が変わり、会う人が減る──そうした変化は自然に起こりうることではありますが、その積み重ねが心や記憶にどんな影響をもたらすのか──そこに注目した研究があります。

イギリスの大規模な調査「UKバイオバンク」では、15万人以上のデータをもとに、人との関わり方や感じ方と、「認知症」の発症との関係を丁寧に分析しました。

調査では

「一人暮らしかどうか」
「人とどれくらい会うか」
「社会活動に参加しているか」

といった生活の行動に加え

「孤独を感じるか」
「話を打ち明けられる相手がいるか」

といった心の面にも焦点が当てられています。

さらに、生まれ持った体質的な特徴──遺伝的なリスクも合わせて解析されました。

日々の暮らし方と、生まれつきの傾向。

二つの要素が重なったとき、認知症のリスクがどのように変化するのかを探ったのです。

中医学では、人と人との交流が「気(き)」の流れを整え、「神(しん)」の働きを安定させると考えられています。

現代の研究が、古くからのこの考え方と重なり始めている点はとても興味深いところです。

この研究ではどんな結果が見えてきたのか──続きを見ていきましょう。


🧪 「つながり」を「数値化」するという挑戦

この研究に参加したのは、60歳以上の男女およそ15万人。

英国全土から集められた人々の健康や生活習慣、遺伝情報が長期間追跡される「UKバイオバンク」のデータをもとにしています。

研究では、参加者の「社会的孤立」と「孤独感」を、それぞれ別の観点から測定しました。

「社会的孤立」は、日常生活の行動として次の3点から評価しました。

  • 一人暮らしかどうか
  • 家族や友人と月に1回以上会っているか
  • 週に1回以上、何らかの社会活動に参加しているか

これらの項目を組み合わせ、客観的に人とのつながりの「濃度」を数値化しました。

一方で、「孤独感」は気持ちの面に着目したもので、以下の2つの質問から主観的な「孤独感」を評価しました。

  • よく孤独を感じるか
  • 親しい人に悩みを打ち明けられているか

こうした質問を通じて、「社会的にどれくらい人とつながっているか」と「主観的にどれくらい寂しさを感じているか」を切り分けました。

これは、「人付き合いの多さ=寂しくない」とは限らないという、現代的な視点にも通じます。


🧬 「つながり」と生まれ持った「傾向」も手がかりに

今回の研究では、参加者それぞれが持つ「遺伝的な傾向」も考慮に入れられています。

ここで研究チームは、DNAの情報から「将来的に認知症になりやすい体質かどうか」を、統計的な指標として評価しました。

研究ではこれを「ポリジェニックリスクスコア」と呼び、数十万の遺伝子マーカーをもとに計算しています。

このスコアが高いほど、認知症になりやすい傾向があると考えられています。ただしこれは診断ではなく、あくまでも「傾向」です。実際にどうなるかは、その後の生活環境や習慣によっても変わります。

興味深いのは、こうした「体質の違い」と「人間関係のあり方」が、それぞれ別々に、そして同時に分析された点にあります。

遺伝的にリスクが高い人もいれば、そうでない人もいます。そして人との「つながり方」が違うことで、認知症のリスクはどう変わるのか──二つの要素を並べて検証することで、新しい手がかりを探ろうとした研究です。


📊 「つながり」の「濃淡」が未来のリスクになる?

研究の結果、人との関わりが少ない「社会的に孤立した人」は、そうでない人に比べて認知症を発症する可能性が高い傾向が見られました。

この傾向は、年齢や生活習慣、心の状態などを考慮に入れても、変わりありませんでした。

一方で、「孤独を感じるかどうか」については、最初の段階では関連があるように見えましたが、他の条件を加えて分析すると、明確な差は見られなくなりました。

つまり、「一人でいること」よりも、「人とどれだけ関わりを持っているか」という実際の行動のほうが、将来のリスクに関わっている可能性が高いのです。

ただし、この研究はあくまで「関連」を示したものであり、「孤立すると必ず認知症になる」という意味ではありません。

人とのつながりが減ることが、認知症のリスクにどのように影響するのか──その背後にある仕組みを明らかにするのは、今後の課題といえます。


🧠 体質と環境の「つながり」の中で見えてきたもの

研究では、遺伝的に認知症のリスクが高い人たちの中でも、「社会的に孤立しているかどうか」で結果に違いがみられました。

リスクが高い人でも、人との関わりがある場合には認知症を発症する割合が比較的低く、反対に孤立している人では高くなる傾向が見られました。

この傾向は、遺伝的なリスクが中程度や低い人たちでも同様でした。

つまり、生まれ持った特徴にかかわらず、人との関わりの多さが、将来のリスクの違いに関係していたと考えられます。

ここからわかるのは、遺伝的な背景と社会的な環境が、それぞれ独立して影響しているということです。

体質は変えられなくても、日々の生活や人との接点は工夫次第で変えられます。人との関わりを保つことが、将来の認知症リスクを減らしたり、予防に役立つひとつの方法になるかもしれません。


🌿 中医学が見る「つながり」と心の安定

中医学では、人との関わりは心と体の調和を保つ大切な営みとされています。

人と接することで生まれる安心感や刺激は、「気(き)」の流れを整え、「心(しん)」に宿る「神(しん)」──精神の働きを穏やかに保ちます。

「心」が安定すれば「神」も落ち着き、記憶や思考が整います。反対に孤立が続くと、「気」の巡りが滞り、「心神(しんしん)」のバランスが乱れやすくなると考えられています。

今回の研究で見られた、孤立と認知症リスクの関係はこの理論とも通じます。

また、「腎(じん)」は生命エネルギーや記憶の源とされ、「心」と「腎」が通じ合う状態(心腎相交)が保たれることで心身が安定します。

人との交流はこの調和を助け、心と体を支える力を高めるとされます。

現代の研究と中医学の理論は、いずれも「つながりが人を健やかに保つ」という点で重なっています。


👩‍👩‍👧‍👧 人との「つながり」が未来の健康を形づくる

今回の研究は、生まれ持った体質や遺伝の影響だけでは説明できない、「人との関わり」が持つ力を示しました。

社会的なつながりを持つことは、心の安定や生活の張りを保つだけでなく、脳の健康にも関わっている可能性があります。

そして、その関係は遺伝的な背景の違いを超えて見られた点が特徴的でした。

人と人との関係は、必ずしも大げさなものでなくて構いません。

近所での挨拶、家族との食事、ちょっとした会話──そうした小さな交流が、心と体のバランスを整える大切な営みになります。

中医学の言葉でいえば、それは「気」を巡らせ、「神」を落ち着かせる日常の養生です。

この研究が教えてくれるのは、誰にとっても手の届くところに、未来の健康を守るヒントがあるということです。

人とのつながりを大切にすることが、心にも脳にもやさしい生き方につながるのかもしれません。

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