「ことば」が「老い」をゆるやかにする

目次

🧠 「ことば」で保つ脳のめぐり

誰かと話しているとき、頭の中ではたくさんの動きが生まれています。

思いを言葉に変え、声にのせ、相手の表情を読み取る──そんな一瞬一瞬が積み重なって、私たちの脳は日々働き続けています。

では、もし複数の言葉を使い分ける生活をしていたらどうでしょう。

家では母語を、職場では英語を、旅先では現地の言葉を少し。そのたびに脳は切り替えを行い、新しい刺激を受ける──このような脳への刺激の繰り返しが、脳のめぐりを整える「鍛錬」になっているのかもしれません。

ヨーロッパ27か国、8万人あまりを対象に行われた最新の研究が、この「言語の使い方」と「年齢の進み方」の関係を丁寧に検証しました。

その結果は、単なる語学の話を超え、老いと健康のとらえ方そのものを見直すきっかけを与えています。

中医学では、老化は「腎(じん)」の力が弱まることで始まるとされます。
腎に蓄えられた「腎精(じんせい)」が減ると、脳や神経の源である「髄海(ずいかい)」も満たされにくくなります。

もし多言語を使うことが脳を刺激し、髄海を活性化して保つのだとすれば、
それは現代の日常の中で「腎精」を養うひとつの方法になります。

この研究は実際にどんなことを明らかにしたのでしょうか。

続きを見ていきましょう。


目次

  1. 🧠 「ことば」で保つ脳のめぐり
  2. 📊 研究のねらい──「老い方」と「ことば」の関係を探る
  3. 🗣  脳と社会──「使い分け」がもたらすもの
  4. 🌱 中医学がとらえる「老い」と「脳」の関係
  5. 🌟 ことばでととのえる、脳のセルフケア

📊 研究のねらい──「老い方」と「ことば」の関係を探る

「ことばを使い分ける生活が、脳にとって良い刺激になるのではないか」

そんな考え方は、これまでにも多くの研究で語られてきました。

実際、多言語を話す人は認知症の症状が遅れて現れるという報告もありましたが、これまでの研究は、対象者が限られていたり、使う言語の量や質をきちんと測れていなかったりと、証拠としてはまだ不十分な点が残されていました。

今回の研究は、こうした過去の限界をこえるために設計されました。

調査の対象は、ヨーロッパ27か国に住む8万人あまりの人々。彼らの言語の使用状況に加え、健康状態や生活の質、社会との関わりなどを幅広く調べ、その情報をもとに「生物学的な年齢」──つまり、体や心の状態から見た「内側の年齢」を推定しました。

その結果、複数の言語を使う人ほど、この内側の年齢が実年齢より若く保たれている傾向がありました。

一方で、母語しか使わない人では、老化がやや早く進んでいる可能性が見られました。

もちろん、言語が老化を直接防ぐとは言いきれません。

研究チームは、多言語を使う生活の中で、脳が活性化されたり、人との関わりが保たれたりすることで、結果的に老化がゆるやかになる可能性がある──そうした間接的な支えに注目しています。


🗣  脳と社会──「使い分け」がもたらすもの

では、なぜ複数の言語を使う人は、そうでない人よりも「内側の年齢」が若く見えるのでしょうか。

研究者たちは、その背景に「切り替えの多さ」と「関わりの広さ」があるのではないかと考えています。

ひとつは、脳の中での切り替えの多さ。

たとえば、ある言語から別の言語に頭の中でスイッチを入れ替えるとき、私たちは自然に注意を集中させたり、表現を調整したりしています。

この働きが繰り返されることで、脳の回路が活発に使われるのではないか──そのように考えました。

もうひとつは、社会との関わりの広さ。

多言語を使う人は、異なる文化や背景を持つ人と関わる機会が増えるため、日常の中で多様な視点や対話が生まれやすくなります。

こうしたつながりが孤立を防ぎ、精神的な張りや心の柔軟さを支えている可能性もあります。

脳の内側と、社会との外側。そのどちらにおいても、言葉の「使い分け」が、脳と心のめぐりを保つ鍵になっているのかもしれません。


🌱 中医学がとらえる「老い」と「脳」の関係

中医学では、老化は「腎(じん)」の働きが衰えることから始まると考えられています。

腎には「腎精(じんせい)」という生命の源となるエネルギーが蓄えられており、この腎精が充実していることで、脳や神経の機能を支える「髄海(ずいかい)」が満たされ、しっかり働くとされています。

加齢とともに腎精が少しずつ減っていくと、髄海も虚して、思考や記憶、集中力が低下しやすくなる――これが中医学がとらえる「脳の老い」の一つのあり方です。

今回の研究が示した「多言語を使う人の方が老化がゆるやかである可能性」は、言葉を使い分けながら日常を過ごすことで、髄海の働きを支え、腎精のめぐりを助けている結果と見ることもできるかもしれません。

また、中医学では腎は「志(こころざし)」を蔵すとされます。意欲や好奇心を保つこと自体が腎のはたらきの一部であり、多言語を使う生活が、こうした「内なるエネルギー」を動かす手助けになっているとも考えられます。

言葉は、ただのコミュニケーション手段ではなく、体と心の深い部分に働きかける「めぐり」の起点でもある──この研究が明かした傾向は、そのように中医学的にも読み取ることができます。


🌟 ことばでととのえる、脳のセルフケア

今回の研究は、多言語を使うことが、脳の若さを保つ手がかりになるかもしれないことを示しています。

でも、決して特別な能力が求められるわけではありません。

ふだんの暮らしの中で「ことば」を少し意識して使い分けるだけでも、脳に適度な刺激が加わり、よい影響が広がっていく可能性があります。

たとえば、外国語の映画を字幕なしで見てみる。
知らない単語を見つけたら意味を調べてみる。
他の国の人と、その人の言葉で少しだけ挨拶してみる。
海外の音楽を聴いて、歌詞を追いながら意味を考えてみる。

こうした身近な行動のひとつひとつが、脳をやさしく刺激し、気分の切り替えや、意欲の維持にもつながっていきます。

「老い」を止めることはできませんが、その進み方や感じ方は変えることができます。

言葉を通して脳と心を動かすことは、毎日のなかで取り入れられる、手軽なセルフケアのひとつです。

今回の研究は、そのヒントが特別なトレーニングや治療ではなく、私たちのふだんの暮らしの中にあることを教えてくれました。

「ことば」との向き合い方が、これからの年の重ね方に、静かに、でも確かに働きかけてくれるかもしれません。

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