「ぐるぐる思考」が脳を老けさせる

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🧠 「考えすぎる」が認知機能に与える影響

「あのとき、ああ言えばよかった」「また同じことをしてしまった」「これからどうなるんだろう」──そんな否定的な考えが、止めようとしても頭の中でぐるぐると回り続けて止まらない夜があります。

これは誰にでも覚えのあることではありますが、もしこうした状態が日常的に続いているとしたら、それは単なる性格の問題ではなく、脳からの大切なサインかもしれません。

近年、こうした「反復的なネガティブ思考(=ぐるぐる思考)」が、脳の働きと深く関わっている可能性を示す研究が注目されています。

うつや不安との関係は以前から指摘されてきましたが、今回の研究が踏み込んだのはその一歩先、私たちの知的な活動を支える「認知機能」そのものへの影響です。

中医学の世界では、古くから「思い悩みすぎると気の流れが滞る」と言われ、過度な思考は気血の巡りを悪くし、エネルギーを生み出す「脾」を傷つけると考えられてきました。現代の科学が導き出した結果が、この中医学の深い洞察と繋がっています。

今回は、この興味深い研究結果を紐解きながら、健やかな脳を守るための「心の整え方」を一緒に考えていきましょう。


🧪 どんな研究?

この研究は、中国・武漢で暮らす60歳以上の男女424名を対象に行われました。平均年齢はおよそ69歳、その約6割が女性です。日々の生活をいきいきと送っている方々の協力を得て、2023年の約半年間をかけて調査が進められました。

調査の軸となるのは、2つの測定項目です。

まず一つは、不安や後悔が頭を離れない「ぐるぐる思考」の強さです。15の質問に答える形式で、ネガティブな思考がどれくらい繰り返し浮かび、自分の意志で止めるのがどの程度難しいのかを数値化しました。

もう一つは、記憶力や注意力といった脳の働きを多角的に測る総合テストです。 この研究の大きなポイントは、すでに認知症などの診断を受けている方を除外している点にあります。病気と診断される手前の、いわば健康な私たちが無意識に行っている「思考の癖」が、将来の脳の冴えにどう影響するのかを解き明かそうとした、予防的な視点を持つ調査です。


📊 どんな結果?

調査の結果、私たちの「ぐるぐる思考」が強いほど、脳の健康スコアが低下するという関連が見えてきました。

具体的には、この思考の癖が少ないグループに比べ、悩みや不安を頻繁に繰り返してしまうグループの人たちは、記憶力だけでなく、図形を正しく捉える視空間認知や、物事を論理的に筋道立てて考える抽象的な思考力などのスコアが明らかに低かったのです。

特に興味深いのは、この傾向が60代から70代の方や、中学・高校以上の教育を受けた人でより顕著に現れた点です。これまで社会の第一線で責任を持って考え抜いてきた人ほど、ふとした拍子に思考がネガティブなループに陥りやすく、それが知らず知らずのうちに脳の限られたエネルギーを消耗させている可能性を示唆しています。

この結果は決して私たちを不安にさせるものではなく、研究者たちは、このぐるぐる思考を「自分自身の力で変えていけるプロセス」であると強調しています。つまり、加齢による避けられない変化とは違い、思考の癖は日々の意識や心のケアによって、後からでも十分に整えていくことができるのです。

この発見は、私たちの生活に新しい「脳の守り方」を教えてくれます。これからは、知的な刺激に加えて、自分の心の状態に気づき、優しくいたわる時間が自分を守るための、何よりの養生になるのだと思います。


🌱 中医学の視点では?

中医学には「思慮過度は脾(ひ)を傷(やぶ)る」という考え方があります。今回の研究の鍵である「ぐるぐる思考」が続くと、消化吸収やエネルギーの生成を司る「脾」の働きが損なわれてしまいます。

脾は、私たちが食べたものから生命の源である「気血(きけつ)」を生み出す大切な場所です。脾が傷つくと、脳の働きを支えるエネルギーが不足し、思考や記憶、判断を司る「心(しん)」を十分に養うことができなくなります。この状態は、研究で示された「ネガティブな思考の反復が脳の限られた資源を慢性的に消耗させ、記憶力や注意力を低下させる」という生理的なメカニズムとも繋がります。

大切なのは「考えるのをやめる」ことではなく、滞った気血の巡りを整えること。

気は体を動かすことで巡り、滞りが解消されます。もし「あ、今ぐるぐる考えているな」と気づいたら、まずは散歩や軽いストレッチなどで物理的に体を動かしてみる──思考より先に「気」を動かす習慣こそが、脳の資源を守り、いつまでも聡明な毎日を過ごすための養生になります。


🌿 未来の自分へ贈る、新しい「脳の守り方」

加齢による衰えは避けられないものと思われがちですが、この研究が示したのは「思考の癖」という、後からでも整えられる部分に、認知機能を守る可能性があるということです。

自分の脳の健康を、自分自身の日常から守っていける余地がある──そのことは大きな希望です。

科学が明らかにした脳へのエネルギー消耗も、中医学が説く気血の滞りも、共通して指しているのは「心と体はつながっている」ということ。

「ぐるぐる思考」に気づいたとき、それは脳が休息を求めているサインかもしれません。そのとき、深く息を吐いて体を動かしてみる。そんな何気ない日々の積み重ねが、数年後の自分を支える確かな養生となります。

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