妊娠中の抗精神病薬について

こんにちは、相模原タナココ漢方薬局・鍼灸接骨院です。

 

病院での治療を続けながら妊活する際「服薬を続けられるかどうか」が問題になることがあります。

 

統合失調症の治療に用いられる薬を服用中の女性が妊娠したときに、薬の胎児に対する影響を心配して、減量や中断を希望するケースが少なくありません。また、服用中の薬を減らすために漢方の服用を希望して相談に来られる方もいます。

 

統合失調症などで使用する抗精神病薬はこれまで治療の中心であった「定型抗精神病薬」から、様々な作用を持った「非定型抗精神病薬」へと変化してきています。

 

「定型抗精神病薬」はさまざまな脳内の神経伝達物質のうち主にドパミンのD2受容体を遮断することにより症状を緩和する薬です。「定型抗精神病薬」は作用は強いものの、「錐体外路症状」という副作用が頻発することが問題となっていました。

そこでその副作用を軽減しつつ、他の脳内神経伝達物質の受容体へも作用するという新たな作用を持つ「非定型抗精神病薬」が開発され、現在はこのタイプの薬が治療の中心になっています。

簡単に言えば、抗精神病薬で従来から使用していた薬は「定型」抗精神病薬、副作用軽減のため開発された薬を「非定型」抗精神病薬と言えると思います。

精神疾患の治療に限らず、妊娠中の女性への薬物治療については、母児双方への影響を考慮しながら、常に慎重である必要があります。

 


妊娠中の薬の服用により、大きな問題となったケースが過去にあります。

 

「サリドマイド」による薬害事件です。

 

サリドマイドは1950年代末〜60年代初めに、世界中で用いられた鎮静・催眠薬です。

日本での承認の際は、不十分な動物実験、日本での臨床試験はなく、当時は海外で使用されている医薬品については簡易な審査で良いとの慣習から非常に簡単な審査のみで、睡眠薬「イソミン」や少量のサリドマイドを含んだ胃腸薬「プロバンM」が承認・発売されました。

サリドマイド、イソミン<相模原 漢方 鍼灸 接骨 タナココ>

サリドマイド、プロバンM<相模原 漢方 鍼灸 接骨 タナココ>

 

この薬を妊娠初期に服用すると、胎児の手・足・耳・内臓などに奇形が起こることがのちにわかりました。服用により、世界で約1万人、日本で推定で約1,000人の胎児が被害にあったとされています。

当時の厚生省は警告があったにも関わらず、科学的根拠がないとして新たに別の1社に製造承認を行ったり、当時の大日本製薬は販売の主力を睡眠薬から胃腸薬に切り替えて宣伝し妊娠時のつわり止めとして服用する機会が増えたり、諸外国のが危険を認識し販売停止回収を始めたにも関わらず、販売停止が10ヶ月遅れたり、回収も不徹底だったり、様々な要因が重なり、被害が拡大しました。

 

日本では生存した309名が被害者として認定されています。

 

ちなみに米国FDAは胎児への影響に関するデータがないとしてサリドマイドを認可しませんでした。

 

こういった経緯もあり、その後は妊娠中の薬剤の服用には、重大な危険性があると認識されるようになり、現在では妊娠中の薬の使用については厳しい制限がされるようになりました。


統合失調症を治療しながら、妊活を希望される際に「今の薬をどうしたら良いのか、やめないと妊活はできないのか」と相談を受けることがありますが、多くの薬は赤ちゃんへの影響に対するデータが豊富ではないため、できるだけ必要最小限の服用になるように調整できるように、妊娠や妊活は計画的に行うことが望まれます。


近年、生殖年齢女性の非定型抗精神病薬の服用は世界的に増加しているという報告があります。

海外では妊娠中の非定型抗精神病薬の使用と先天性異常の発生率との関連は認められないとの結果が報告がされるようになり、治療中、服薬中でも細心の注意を払いながら妊活、妊娠が継続できると言うことがわかってきてましたが、これまで日本からの報告はありませんでした。

 

最近、国立成育医療研究センターの妊娠と薬情報センターの研究グループが、母親の妊娠中の非定型抗精神病薬の使用が胎児の先天異常に与える影響について検討した研究結果を報告しました。

 

その結果、非定型抗精神病薬薬服用した場合でも、生まれた子どもには先天異常の発生率の上昇は認められなかったことがわかりました。


この研究は、妊娠中の非定型抗精神病薬の使用を対照群と比較した、日本で初めての観察研究であり、妊娠中も非定型抗精神病薬が必要なケースで使用を検討する際の重要な情報となる報告です。

今後もこのような組みによるさらなる情報の充実が期待されます。

 

薬は本来、効果と副作用を併せ持つものであり、「使用するメリット」と「使用した際のデメリット」のバランスを考慮して使用するものです。

デメリットを気にせずに用いれば過去の薬害の繰り返しになりますし、デメリットばかり気にして必要な薬剤が使えなくなってしまうのも避けなければなりません。

 

妊娠中の薬の服用は、妊婦の健康を維持・安定させることであり、このことが赤ちゃんの成長を助けることにつながることが条件です。

薬を服用することで得られるメリットとデメリットのバランスを十分に考慮し、得られるメリットが大きい場合において薬を使用することが重要ですが、判断するための情報が必要です。

判断の根拠になりうる情報が増えていくことで、服薬が必要な方が悩んだりすることが減り、母子ともに健康に妊娠、出産が迎えられるようになります。

もちろん、全てにおいて情報が揃っているわけではありません。そのような状況においては漢方が役立つ場面もありますので、上手に役立てていただきたいと思います。

 

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