新型コロナウイルス感染症とイブプロフェン

「抗炎症薬(イブプロフェン、コルチゾンなど)服用で、感染悪化の要因になる可能性がある。発熱時は、パラセタモール服用を。すでに抗炎症薬を服用している場合、または疑わしい場合は医師に相談を。」

仏保健相のツイートで世界が混乱しています。

ウィーン大学病院の感染症を担当した医師とされる人物により、Facebookが所有するメッセンジャーサービスであるWhatsAppからメッセージの音声録音が勢い良く広がりました。

これをウィーン大学はフェイクニュースとしています。

『注意してください! 現在、イブプロフェンとCOVID-19の関係で「Wiener Uniklinik」の研究結果について伝えられている WhatsApp テキストと音声メッセージは、Med Uni Wienとはまったく関係がなくフェイクニュースです。』

しかし、このツイートが元になり、イブプロフェンの服用で新型コロナウイルス感染症が悪化するから控えるようにという内容の情報が急増しました。

この流れについてはBBCの記事もわかりやすそうです。(google翻訳などをお使いいただくと便利です。)*後日、日本語に翻訳されていました。

 

基本的に医療従事者であれば、この時期はインフルエンザの可能性も考えてアセトアミノフェンを使用することが多いと思います。

イブプロフェンに限らず、日本では大人気のロキソプロフェン(ロキソニン)も避けます。アスピリン(バファリン)もそうです。ツイートにある「コルチゾン」は、ステロイドなので、感染性の疾患の場合は免疫抑制作用があるため避けます。

イブプロフェンも、ロキソプロフェン、アスピリンも分類としてはステロイドではない消炎鎮痛剤ということで、「非ステロイド性消炎鎮痛薬(Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs:NSAIDs)と呼ばれます。

このツイートでなぜ「イブプロフェン」が取り上げられたのかわかりませんが、おそらく海外での一般的なNSAIDsが「イブプロフェン」だからだと思われます。

おそらく、イギリスでもアメリカでも「ロキソプロフェン」は発売されていないと思います。(知っている方がいらっしゃったら教えてください。)中国では「乐松(洛索洛芬钠)」という名前で発売されています。

おそらく日本だったら「イブプロフェン」が「ロキソプロフェン」になっていたのかもしれません。それだけ代表的な消炎鎮痛剤なのだと思います。

 

新型コロナウイルス感染症時は「発熱」がよく見られる症状の1つです。

この熱が結構しつこくて困ります。体も疲れてだるくなりますし、高すぎると意識もボーッとして危険です。

新型コロナウイルス感染症に限らず、感染症時には、基本的には体が必要としてだしている熱ですので、強力には下げない方が良いとされています。解熱剤は寝て休んでいても体が休まらないような高熱の時に使用します。基礎疾患がある方では負担を軽くするためにも必要な場合もあります。

 

解熱剤には先ほど出てきたイブプロフェンやロキソプロフェン、アスピリンが含まれる「NSAIDs」と呼ばれるもの以外に、パラセタモール(アセトアミノフェン)があります。

アセトアミノフェンは少し不思議な薬で、安全域も広く、副作用も少なく、飲み合わせの問題も少ないため、市販薬でも以前より使用されています。また痛みをとったり、熱を下げたりする働きはありますが、炎症を抑える働きはほとんどありません。

それぞれのおおまかな特徴や注意点としてはNSAIDsは消化性潰瘍や腎障害、アセトアミノフェンは肝障害に注意が必要とされています。

妊婦さんにはどちらも避けた方が良いとされています。
(アセトアミノフェンは近年、胎児動脈管収縮を起こす可能性があるとの報告や、生まれた子どもの異常行動のリスクが高くなる可能性があるとの報告があります。)

 

今の段階では、何が正しいのかが分かっていません。実際に新型コロナウイルス感染症に対してNSAIDsが与える影響について検証した報告もないようです。

ですので、現時点では、今回の新型コロナウイルス感染症においても、通常の感染症時の薬の選択方法をとるしかありません。通常は、新型コロナウイルス感染症に限らず他の感染症治療においても、NSAIDsの使用は控える傾向にあります。

 

情報が国家レベルで錯綜していますが、今回は、おそらくこのあたりの情報が発端になったのかなという気がしています。フランス医薬品・保健製品安全庁(ANSM)によると、NSAIDsにより感染症の悪化が示唆されるとgoogle翻訳では読めます。となると当然、新型コロナウイルス感染症では使えないということになります。

また、LANCETでは新型コロナウイルスが侵入に必要なアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)受容体が、イブプロフェンにより増加することで感染が増強される可能性を示唆しています。

この報告に対してというわけではありませんが関連情報として、AHAは、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤とアンジオテンシン受容体遮断薬(ARB)は、心臓のACE2発現を増加させるが、・・・現在、COVID-19や上記の薬剤で治療された心血管疾患の病歴を有するCOVID-19の患者におけるACE阻害剤、ARBまたは他のRAAS拮抗薬の服用による有益または有害な結果を示す実験データまたは臨床データはないとし、HFSA、ACC、およびAHAは、心不全、高血圧、または虚血性心疾患など、これらの薬剤の有益性が知られている適応症に対し、現在そのような薬剤を処方されている患者に対して、RAAS拮抗剤の継続を推奨する。 心血管疾患の患者がCOVID-19と診断された場合、患者ごとに血行動態と臨床症状に応じて個別の治療がなされる必要がある。したがって、標準的な臨床診療を無視して、RAAS関連の治療を追加または中止の助言をするべきではないとしています。

 

このほか、

イギリスNHS(National Health Service) は、現在、イブプロフェンがコロナウイルス(COVID-19)を悪化させるという強力な証拠ないとしつつも、より多くの情報が得られるまで、パラセタモール(アセトアミノフェン)が飲めないと医師から言われない限り、パラセタモール(アセトアミノフェン)を服用してコロナウイルスによる症状を治療してください。医師のアドバイスにより、イブプロフェンまたは別の非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)を服用している場合は、確認せずに服用を中止しないでください、とあります。

 

BMJでは、科学者と医師は、COVID-19の症状を示す人はイブプロフェンではなくパラセタモール(アセトアミノフェン)を使用すべきだというフランスの保健相の主張を支持しているとしています。

 

ハーバード大は、・・・これらは観察にすぎず、科学的な根拠に基づいたものではないが、現時点ではアセトアミノフェンを使用して新型コロナウイルス感染症時の発熱や痛みを緩和することは賢明なようだとしています。

 

EU医薬品庁は、イブプロフェンとCOVID-19の悪化との関係を確立する科学的証拠は現時点ではないとしていますが、COVID-19での発熱、痛みの治療を開始する場合、パラセタモール(アセトアミノフェン)やNSAIDsなど、すべての利用可能な選択肢を検討する必要があり、それぞれのメリットやデメリットをがあることを理解し、EU治療ガイドラインに沿って考慮する場合、発熱や痛みに対する初期治療では多くの場合、パラセタモール(アセトアミノフェン)が推奨される、としています。

 

WHOのツイートでは、一時イブプロフェンは控えた方た良いとするスタンスでしたが、現在は使用に反対する勧告はしないとしています。

言うことが変更になったため世の中は混乱しているようです。

(詳細はリンク先をご確認ください。)

 

まとまりのない内容になってしまいましたが、それぞれ文章の雰囲気からすると、全体的な流れとしては、今はよくわかっていないから、どちらが良いのかという結論は出せないけど、どちらがいいと言われれば、アセトアミノフェンかな・・・と言う雰囲気です。

WHOはイブプロフェンでの悪化報告は確認できていないので、控えることを求める勧告はしないとしていますが、新型コロナウイルス感染症に関してはそうかもしれませんが、他の感染症もありますので、わからない場合は医師や薬剤師にまずは相談するのが良いと思われます。一人ひとりの状態を考える必要がありますので安易な判断で薬を服用しないようにしましょう。

 

漢方の話題は微塵も出てきませんが、重症ではない限り症状に合わせた漢方があるので、新型コロナウイルス感染症に限らず感染症の初期に漢方はおすすめです。特に昔はちょっとした風邪でも命を落とすことがあったため、症状の変化に合わせた処方が沢山あります。悩んだらご相談ください。

 

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