新型コロナウイルス感染症治療におけるシクレソニド(オルベスコ)への期待

シクレソニド(商品名:オルベスコ)という薬があります。

今回、新型コロナウイルス感染による肺炎初期〜中期にシクレソニドを使用したケースで症状が改善したとの報告がありました。

 

シクレソニドは、日本で発売されている「1日1回投与」ができる成人用の吸入ステロイド気管支喘息治療薬です。

シクレソニドは吸入された後、肺の中の酵素の働きで効果のある「活性体」となり効果を発揮します。またこの活性体は脂肪酸と結合することで肺に長時間とどまるため、1日1回の投与が可能となっています。

肺内で活性化する薬のため口腔咽頭部内にみられる副作用(声枯れ、口腔内のカンジダ症など)が少ないと言われており、また全身性の副作用(副腎皮質機能抑制、白内障、緑内障など)も起こりにくいと考えられています。

 

今回はこのシクレソニドが新型コロナウイルス感染による肺炎に効果があったとする報告があり話題になっています。

報告ではシクレソニドには抗ウイルス作用抗炎症作用があるとされ、これらの作用により新型コロナウイルスによる肺障害を抑制する可能性があるとしています。

 

シクレソニドは「ステロイド」です。

通常ステロイドはウイルス性の感染症に使用した場合、ウイルス血症を長引かせることがあるために一般的には推奨されません

しかしシクレソニドには、局所投与のため全身投与のステロイドと比較すると、血液中の濃度の増加は少なく、それに加えて他のステロイドには無い何らかの作用で抗ウイルス作用を示すことが考えられているため、新型コロナウイルスの感染による肺炎に使用されたようです。

このような働きはシクレソニド特有のもので、シクレソニド以外の吸入ステロイド薬にはこのような働きは認められていません。

 

実際の臨床応用では、ウイルスの増幅時間(6〜8時間)を考えると、頻回に投与して、肺に十分な量を届けるために、一般に使用する量より多く吸入する必要があるとしています。

また抑制しきれなかったウイルスの再活性化や耐性化を防ぐために、14日程度継続使用するのが望ましいとのことです。

加えて、ウイルスの増殖は肺の奥の方(肺胞上皮細胞)で起こっているため、吸入は奥まで届くようにできるだけ深く吸入することとしています。

まとめると


COVID-19陽性確定者の肺炎に対して
(1)シクレソニド200μg1日2回、1回2吸入を14日間
(2)シクレソニド200μg1日3回、1回2吸入を約9日間

(1)を基本とし、重症例、効果不十分例に対しては(2)を検討する。また、ウイルスは肺胞上皮細胞で増殖するため、深く吸入することで効果が高まると考えられる。(無症候長期陽性者については、今後の検討が必要)


となります。

 

今回の報告で注意して欲しいのは、報告があったのは「3例」ということです。

これからさらに検討を重ねる必要がありますので、これをもって「特効薬だ!」とは思わずに、専門家の判断をお待ちください

 

世の中が混乱している時の報告でもあります。のちに「やはり違っていました」ということは混乱した状況下ではよく見られることです。

いろいろなことを検証しているんだなぁ・・・くらいの感じで今後の報告を見守りましょう。

 

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シクレソニド構造式

専門分野ではないので文字色を薄く、小さくしています。興味のある方だけ。問い合わせもあったのでもう少し詳しく書いてみたいと思います。シクレソニドがステロイドなのになぜ効果があるのかという作用機序についての簡易考察です。ステロイドなのに・・・なぜ?、と思われている方が多いようです。そこで「効く」という前提で、効くとすれば何が作用しているのかというところからバイアスかかりまくりのアプローチで考えてみました。専門の分野では全くありませんので、「いやいや、あり得ない」と感じてもご容赦ください。専門の方には優しくご指摘いただけると幸いです。添付文書やインタビューフォームを眺めて「そうだったらいいなぁ」と思った内容です。そのうち専門家の方々が解き明かしてくれると思いますので、個人的なメモをちょっとのぞいたという程度でお願い致します。

シクレソニドのみが効果があるとすれば、他の吸入ステロイドにはないところでの何らかの作用と考えました。シクレソニドは構造を見てみるとこのように体内で変化します。これはシクレソニドのみがもつ特徴(プロドラッグ)です。他の吸入ステロイドにはなく、シクレソニドにしかないという特徴としてあげられるのは「プロドラッグ」です。今回「シクレソニド」のみの効果であれば、ステロイドの作用以外のところでの効果とふと思い、添付文書とかインタビューフォームなどを眺めました。吸収されたシクレソニドは作用部位で酵素(エステラーゼ)の働きにより、作用部位に届くまで効果が出ないようにブロックしていた「イソブチリル基」を外します(上の図参照)。イソブチリル基は体には特に害のないものとされていますが、核酸を使った実験をするときに、イソブチリル基は反応させたい部位以外の核酸を保護する時に使用されます。そこで活性化する際にでた余り物が、もしかしてウイルスのRNAの複製を阻害をして抗ウイルス作用・・・?、なんとういうタナボタ!!とふと思ったわけです。考察と言えるものではなく、思いつきのようなものですのでこれ以上はなんとも言えませんが、特効薬になるのでしたらこれは素晴らしい発見です。専門家による検証に期待したいと思います。特効薬だとすれば、ものすごい発見になりそうだと思うのは私だけ・・・!?

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