🪞 欲しかったものは手に入ったけれど
欲しかったものを買えた。
仕事でも、ひとつ目標を達成した。
うれしいはずなのに、気づけば「もう少し、こうだったら」と考えています。
何かが手に入る喜びと「自分の人生に満足している」という気持ちは、どうも少し違うようです。
満足感について考えるとき、収入や仕事、家族との関係など、暮らしの状況を思い浮かべますが、今回の研究が注目したのは、その人自身の性格。
ふだんの考え方や行動の傾向が、自分の人生にどれくらい満足しているかと、どの程度結びついているのかを調べた研究があります。
中医学では、気持ちを理解するときに、眠りや食欲、疲れ方などもあわせて見ていきます。「満足しにくいのは、自分の性格だから」と考えていても、そのときの心身の調子まで振り返ると、違う面が見えてくるかもしれません。研究が捉えた性格の特徴に、中医学からどんな視点を加えられるかも考えていきます。
ただ、性格も満足感も、本人に尋ねるだけでは、その日の気分や答え方の癖に影響されることがあります。そこで研究者たちは、その人をよく知る家族や友人にも協力してもらい、本人の回答と照らし合わせながら調べました。
🧪 どんな研究?
自分の人生への満足感なら、本人に聞くのがいちばん……ですが、たまたま気分が沈んでいたら、自分の性格にも人生にも、いつもより厳しい点をつけてしまうかもしれません。
そこで研究者たちは、本人と、その人をよく知る家族や友人の両方に、質問に答えてもらいました。
対象は、エストニアの参加者を中心とする2万2千人以上。心配しやすさや人づきあいの仕方、物事への取り組み方など幅広く聞いています。
人生への満足感は、今の人生をどう評価しているかに加え、人生の方向性や将来の見通しも含めて調べました。
ここで工夫したのは、本人と周囲の人の回答を組み合わせたこと。たとえば、本人が答えた性格と、家族や友人から見た満足感の関係を調べる。反対に、家族や友人が評価した性格と、本人が答えた満足感も照らし合わせます。
ひとりの答え方に左右されにくくしたうえで、測定に伴う誤差も統計的に考慮し、性格と満足感がどれほど強く結びついているかを推定しました。
一部の参加者では、約10年前の回答までさかのぼっています。今の性格と今の満足感だけでなく、年月を隔てたデータにも同じようなつながりが見られるかを調べました。
なかなか、手の込んだ研究です。
📊 どんな結果?
研究者たちにとっても、性格と人生への満足感に、これほど強い結びつきがあるという結果は予想外でした。
本人と家族・友人の回答を組み合わせ、答え方の偏りや測定の誤差を考慮すると、従来の研究で示されていた以上に強い関係が見られたのです。
満足感が高い人には、気持ちが安定している、人や活動に積極的に関わる、こつこつ取り組むといった傾向がありました。
細かな回答を見ると「自分の能力に自信がある」「努力は報われると思う」ことも満足感の高さと結びついていました。
一方、「人から誤解されていると感じる」「何をしても気持ちが弾まない」「なかなか決められない」といった傾向は、満足感の低さと関連していました。
一部の参加者の約10年前の回答を使っても、おおむね似た関係が見られています。「その日の気分」だけでは説明しきれないつながりがありそうです。
この研究でわかったのは、性格と満足感の結びつきの強さです。性格が満足感に影響するのか、満足感が性格に影響するのかまでは、確かめられていません。
そのうえで注目したいのは、自分の能力への自信も満足感と関係していた、という点。
大きな成果でなくても、自分の自信につながった経験はたくさんあるはずです。「自分にはできることがある」という感覚と満足感のつながりは、こうした身近な経験が支えとなります。
できなかったことを反省する日にも、できたことまで忘れないこと──自分の暮らしを振り返る材料としてそうした経験もちゃんと覚えておくことの大切さが、この研究が伝えたいことなのかもしれません。
🌱 中医学の視点では?
中医学では、心と体は互いに影響し合うと考えます。心穏やかに過ごすために、体調や毎日の過ごし方も大切にします。
「心配しやすい」「何をしても気持ちが弾まない」。そんな自分について考えるときにも、どんな体調で、どんな毎日を重ねてきたかを見ていきます。疲れが抜けないまま、休む時間も取れない。そうした暮らしが、いつの間にか当たり前になっていることもあります。
そこで、眠りや食事、働く時間と休む時間の配分を振り返ってみる。夜更かしが続いているなら、明日にできそうな用事は明日に回して睡眠を確保する。食事の間は仕事の手を止める。
中医学の養生では、こうした身近なところから心身を整えていきます。
人生への満足感を考えるときにも、自分の性格だけで話を終えず、体調や暮らしまで含めて自分を見る。心穏やかに過ごせるよう、日々の生活にも手をかける。中医学には、そんなふうに心と体の両方を大切にする視点があります。
🍀 「まだ足りない」と思う日にも
欲しかったものを買えた。仕事でも、目標を達成した。
それでも「まだ足りない」と思うときがあります。
今回の研究では、人生への満足感と、ふだんの考え方や行動の傾向に、従来考えられていた以上に強い結びつきが見られました。
「満足できない」と感じたとき、暮らしの何を変えたいのかと一緒に、今あるものを自分がどう受け止めているかも振り返ってみる。結果に不満があるのか、結果は出ていても自信が持てないのか。そこがわかれば、次に考えることも「もっと成果を出す」だけではなくなります。
これからかなえたいことを考えるときには、満足を感じた場面も思い出してみる。誰かと話して「わかってもらえた」と感じたときや、自分の力が役に立ったとき。そうした経験からも、自分が何を大切にしているかがわかります。
今の暮らしで何を変え、何を続けたいのか。自分の感じ方にも目を向けながら、どんな暮らしなら満足を感じられるのかを考えていくことが大切なのだと思います。
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