🍽️ 「特に運動していない」の、その先にあるもの
食事をしっかり食べて、デザートも楽しむ。それでも、体形があまり変わらない人がいます。
「何か運動をしているのかと思ったら、特にしていないらしい」
少しうらやましくなる話です。
ただ、一緒に食事をしただけでは、その人の一日の食事量も、エネルギーの使い方もわかりません。
食べる量を増やしたときの体脂肪とエネルギー消費の変化を調べた研究があります。
この研究で注目されたのは、ジョギングや筋トレではなく、本人が「運動」とは思っていないような日常の活動でした。
中医学の古典《千金要方》には「常欲小労」という言葉があります。疲れすぎない程度に、日々体を動かすことを大切にする考え方です。日常の活動をエネルギー消費の面から調べた今回の研究には、この考え方と通じる面白さがあります。
研究者たちは参加者の食事を用意し、「あえて多く食べてもらう」実験を行いました。余分に食べたエネルギーがどう使われるのか、普段の生活まで含めて調べたのです。
🧪 どんな研究?
参加したのは、25〜36歳の肥満ではない成人16名。
最初の2週間で、体重が増えも減りもしない食事量を一人ひとり確認しました。その後の8週間は、その量に毎日1,000kcalを追加して食べてもらいました。
食事は研究施設で管理し、新しい「運動」は始めずに、普段の運動量を保ってもらいました。
食べる量を増やす前と8週間後に、体脂肪と一日の総エネルギー消費量を測定しました。注目したのは、スポーツや筋トレではない日常の動きによるエネルギー消費です。
歩く、立つ、姿勢を保つ、座っているときに身動きする。こうした活動によるエネルギー消費を「NEAT(非運動性活動熱産生)」と呼びます。運動量が前後で変わっていないことを確かめたうえで、活動による消費の増減をNEATの変化として推定しました。
食べる量を増やしたとき、NEATがどれくらい変わるのか。その違いが、体脂肪の増え方と関係するのかを調べた研究です。
📊 どんな結果?
8週間で増えた体脂肪は、最も少ない人で約360g、最も多い人で約4.2kgでした。毎日同じ1,000kcalを余分に食べても、増え方には10倍以上の差が出たのです。
参加者は運動量を増やさず、普段どおりに生活していましたが、NEATが増えた人、ほとんど変わらない人、逆に減った人がいました。
そのなかで、NEATが大きく増えた人ほど、体脂肪の増加は少なくなっていたことが示されました。
「特に運動はしていない」という日にも、立つ、歩く、姿勢を保つといった動きがあります。食べる量が増えたとき、こうした日常の活動に使われるエネルギーの違いが、体脂肪の増え方と関係していたのです。
🌱 中医学の視点では?
《千金要方》の「常欲小労」は、「但莫大疲」と続きます。日々少し体を動かす。ただし、ひどく疲れるほどはしない──動くことと、その加減を一緒に考える養生です。
今回の研究と通じるのは、暮らしの中の動きに目を向けているところです。古典では、適度に体を動かすことを日々の健康につながるものとして捉えます。
今回の研究で報告された、「運動」と意識しない日常の活動に使われるエネルギーが、体脂肪の増え方を穏やかにしていたということは、体の見方は違いうものの、日常の小さな動きを大切にする点には、重なるところがあります。
「小労」を今の暮らしに取り入れるなら、近所の用事には歩いて出かける。仕事の区切りに立ってお茶をいれる。掃除や片づけを、少し体を動かす時間にする。まとまった運動時間が取れない日にも、暮らしの中には体を動かす場面があります。
そして、忘れてはいけないのが「但莫大疲」です。
すでに仕事や家事で疲れている日に、さらに「動く」必要はありません。その日の体調や疲れ具合に合わせて、動く量を加減することも、養生では大切にされています。
🚶 運動できなかった日でも、活動量はゼロではない
忙しくて、今日は運動できなかった──でも、一日の活動量は、運動した時間だけで決まるわけではありません。
駅まで歩く。
洗濯物を干す。
掃除や料理をする。
電話は立って話す。階段を使う。
「運動」と呼ぶほどではない、こうした日常の動きでも、体はそのたびにエネルギーを使っています。
一日の中では、運動をしていない時間のほうがずっと長い。
「運動したかどうか」だけでなく、それ以外の時間をどれくらい座って過ごし、どれくらい立ったり歩いたりしていたかも、一日の活動量を左右します。
今回の研究でも、こうした運動以外の日常的な活動量が、体脂肪の蓄積の仕方と関係していることが示されました。
「今日は運動できなかった=何もしなかった」ではありません。
まとまった運動の時間が取れない日でも、「日常」には体を動かす場面があります。
立った。歩いた。少し動いた。
それも、きちんと一日の活動量です。
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