男性更年期障害(LOH症候群)と漢方・鍼灸

男性更年期障害(LOH症候群)×漢方・鍼灸|診断・メカニズム・治療の限界と東洋医学アプローチ|相模原 タナココ
男性更年期障害(LOH症候群)× 漢方・鍼灸 / 相模原 タナココ

「歳のせい」で片づけない。
男性更年期障害(LOH症候群)の病態と、
漢方・鍼灸によるアプローチ

倦怠感、気力の低下、不眠、ほてり、性欲の減退——これらは「老化の自然な流れ」ではなく、テストステロンの低下が引き起こす症状として、医学的にアプローチできる状態です。日本では推定600万人以上が男性更年期障害(加齢性腺機能低下症・LOH症候群)に該当すると言われながら、実際に受診に至る方はごく一部にとどまっています。
テストステロン補充療法(TRT)だけが選択肢ではありません。中医学の「腎虚(体のエネルギーの根本が弱まった状態)」という視点から体質の土台を整える漢方・鍼灸は、症状の改善と生活の質の回復に向けて、補完的な役割を担います。
相模原市のタナココは、薬剤師・鍼灸師の国家資格を持つ専門家が、西洋医学と中医学の両面から一人ひとりの状態に向き合います。

最終更新日:2026年5月26日

男性更年期障害(LOH症候群)の理解と補完的アプローチ

男性更年期障害(LOH症候群)とは――定義と現状

男性更年期障害(加齢性腺機能低下症・LOH症候群:Late-onset Hypogonadism)は、加齢に伴う男性ホルモン(テストステロン)の低下によって、倦怠感・気力低下・不眠・ほてり・性機能の変化などが現れる状態です。「更年期障害は女性のもの」というイメージが根強いですが、男性においても医学的に認識された概念であり、日本泌尿器科学会および日本Men'S Health医学会が診療指針を策定・公表しています。

女性の更年期が閉経前後の急激なホルモン低下として起こるのに対し、男性のテストステロンは20代をピークに年間1〜2%程度、緩やかに低下します。変化が緩慢であるため症状に気づきにくく、「歳のせい」「仕事の疲れ」として見過ごされやすいのが特徴です。症状の出やすい年齢層は40代後半から60代が中心ですが、強いストレスや生活習慣の乱れが加わることで、より若い世代でも発症することがあります。

放置するとどうなるか――LOH症候群が引き起こすリスク

長期間にわたるテストステロン低値状態は、更年期症状にとどまりません。骨密度の低下(骨粗鬆症のリスク)、筋肉量・筋力の低下(サルコペニアのリスク)、内臓脂肪の蓄積、インスリン抵抗性の悪化(血糖値を調整するホルモンの効きが悪くなること)、善玉コレステロール(HDL)の低下、といった変化との関連が報告されています。こうした変化は、メタボリックシンドローム・動脈硬化・2型糖尿病などのリスク因子にもなり得ます。

また、ED(勃起障害)と動脈硬化・狭心症・心筋梗塞などの心血管疾患との関連は多くの研究で報告されており、性機能の変化が全身の血管状態を反映しているサインである可能性が指摘されています。性機能の変化をきっかけに、全身の健康状態を見直す機会と捉えることも大切です。「年齢だから仕方ない」と抱え込まず、まずは状態を正しく把握することが回復の第一歩です。

診断基準――AMSスコアと血液検査

LOH症候群の診断は、自覚症状の評価と血液検査(テストステロン値の測定)を組み合わせて行います。テストステロン値が低いだけで診断が確定するわけではなく、逆に値が参考範囲内でも症状が強い場合もあります。症状・検査値・生活背景を総合的に判断することが基本方針です。

AMSスコアによる症状評価

国際的に広く用いられているのが AMS(Aging Males' Symptoms)スコア です。精神・心理的症状、身体的症状、性機能症状の3領域にわたる17項目を5段階(1〜5点)で自己評価し、合計点で重症度の目安を判定します。

合計スコア 重症度の目安 状態の概要
17〜26点 症状なし LOH症候群に相当する自覚症状は少ない
27〜36点 軽度 症状が日常に影響し始めている
37〜49点 中等度 複数の症状が重なり、生活の質に影響している
50点以上 重度 症状が強く、日常生活・仕事への支障が大きい
AMSスコアは症状の見落としが少ない(感度が高い)一方で、LOH症候群以外の状態でも高い点数が出ることがあります(特異度が低い)。そのため、スコアだけでLOH症候群と診断することはできません。うつ病・甲状腺疾患・睡眠時無呼吸症候群なども似た症状を呈するため、これらとの見分け(鑑別診断)が重要です。

テストステロン値の基準

血液検査では、たんぱく質と結合せず体内で実際に働ける状態にある 遊離テストステロン(Free Testosterone) が、特に重要な指標とされています。総テストステロンの約1〜3%が遊離型で、加齢とともにSHBG(性ホルモン結合グロブリン)が増えるため遊離型の低下がより顕著になります。日本泌尿器科学会・日本Men'S Health医学会の診療指針に基づく参考値は以下のとおりです。なお、これらは参考値であり、施設・検査法によって解釈に差がある場合もあります。

総テストステロン(Total T)

  • 250 ng/dL 以下 :TRT考慮の目安
  • 250〜350 ng/dL :遊離テストステロンも合わせて評価
  • 値が参考範囲内でも症状が強い場合は、遊離テストステロンで再評価

遊離テストステロン(Free T)

  • 8.5 pg/mL 以下 :LOH診断・TRT考慮の目安
  • 8.5〜11.8 pg/mL 未満 :グレーゾーン(ボーダーライン、要経過観察)
  • 採血は午前中(できれば11時まで)推奨(日内変動があるため)
  • 前立腺がんの有無を確認するPSA検査も診断プロセスに含まれる
注意: テストステロン値には日内変動があり(午前に高く午後に低い傾向)、体調・睡眠・ストレスによっても変動します。一度の採血のみで確定判断するのではなく、必要に応じて再測定が行われます。また、テストステロン値が参考範囲内でも症状が強い方も多くおり、数値だけで診断・除外はできません。

症状――身体・精神・性機能の三領域

LOH症候群の症状は非常に多岐にわたり、「身体症状」「精神・心理症状」「性機能症状」の3つの領域にまたがります。これらが複数重なって現れることが多く、個々の症状は「よくある疲れ」と区別しにくいのが特徴です。しかし複数が積み重なると、日常生活・仕事・家庭関係に大きな影響が出ることがあります。

身体症状

  • 全身の倦怠感・疲れやすさ(休んでも回復しにくい)
  • ほてり・発汗(女性の更年期に似た熱感)
  • 筋力・体力の低下、筋肉量の減少
  • 関節痛・腰痛・肩こり
  • 頭重感・めまい
  • 頻尿・夜間尿の増加
  • 体脂肪(特に内臓脂肪)の増加

精神・心理症状

  • 意欲・気力の低下(何もやる気が起きない)
  • 集中力・記憶力の低下
  • 抑うつ気分・気分の落ち込み
  • 不眠(入眠困難・中途覚醒)
  • イライラ・怒りっぽさ・情緒不安定
  • 不安感・焦燥感
  • 仕事へのモチベーション低下

性機能症状

  • 性欲(リビドー)の低下
  • 勃起障害(ED)・勃起の硬度低下
  • 朝の勃起(モーニングエレクション)の減少
  • 射精後の疲労感の増大

症状の特徴と注意点

  • 複数の症状が同時に重なって現れることが多い
  • 症状の出方・強さには個人差が非常に大きい
  • 緩やかに進行するため「老化」と区別しにくい
  • うつ病・自律神経失調症と症状が重複することがある
  • ストレス・過労・生活習慣の乱れで急激に悪化することがある

「いくつかあてはまるが、病院に行くほどではないかも」という方も多くいらっしゃいます。しかし、複数の症状が重なっている場合や、日常生活・仕事・家庭関係に影響を感じている場合は、早めに状態を評価することが回復への近道です。

発症のメカニズム――テストステロン低下とHPG軸

LOH症候群は「単にホルモンが減った」という単純な話ではありません。加齢による精巣(生殖腺)の機能変化、脳・下垂体・精巣を結ぶホルモン調節経路(HPG軸)の変化、さらにストレス・生活習慣・代謝の変化が複合的に絡み合って発症します。

HPG軸と加齢による変化

テストステロンの分泌は、 HPG軸(視床下部―下垂体―精巣系) によって精密に調節されています。「視床下部→下垂体→精巣」という命令経路のなかで、精巣のライディッヒ細胞がテストステロンを産生します。この仕組みの各段階に加齢の影響が及ぶことで、テストステロンが緩やかに低下します。

精巣機能の低下
ライディッヒ細胞の減少

加齢とともに精巣内のテストステロン産生細胞(ライディッヒ細胞)の数と機能が低下します。同じ量の脳からの命令に対しても、産生されるテストステロンが少なくなっていきます。

中枢性の変化
視床下部・下垂体の機能変化

加齢とともに視床下部からの指令ホルモン(GnRH)の分泌パターンが変化し、下垂体の反応性も低下します。テストステロン低下に対する代償機能が十分に働かなくなります。

輸送たんぱく質の変化
SHBGの増加と遊離型の低下

加齢とともにSHBG(性ホルモン結合グロブリン)が増加し、テストステロンの多くがたんぱく質と結合して不活性化されます。その結果、実際に体で使える「遊離テストステロン」が総テストステロンより速く低下します。これが、診断において遊離テストステロンの測定が重要とされる理由です。

代謝と悪循環
肥満・代謝疾患との双方向関係

肥満・2型糖尿病・メタボリックシンドロームはテストステロンをさらに低下させます。脂肪組織はテストステロンを女性ホルモン(エストロゲン)に変換する酵素を持ち、HPG軸をさらに抑制します。テストステロン低下と代謝異常は互いに悪化させ合う関係にあります。

ストレス・生活習慣との複合的関与

LOH症候群の発症・悪化には、加齢だけでなく心理社会的ストレスと生活習慣が大きく関与します。慢性的なストレスがかかると、副腎から分泌されるコルチゾール(ストレスホルモン)が高い状態が続きます。このコルチゾールがHPG軸を抑制することで、テストステロンの産生が低下することが知られています。

テストステロン低下を促進・悪化させる主な要因

生活習慣的要因: 慢性的な睡眠不足(睡眠中のテストステロン産生が低下する)、過度のアルコール摂取、喫煙、肥満・過体重、継続的な運動不足

心理社会的要因: 長期間の強いストレス(仕事・家庭・経済的)、役割変化・定年前後のアイデンティティの揺らぎ、孤立感、うつ状態

身体的要因: 慢性疾患(糖尿病・高血圧・慢性腎臓病)、一部の薬剤(長期ステロイドや一部の向精神薬など)の使用、下垂体・精巣の疾患

「加齢+ストレス+生活習慣の乱れ」が重なることで、本来は緩やかなはずのテストステロン低下が加速することがあります。この複合的なメカニズムは、単純なホルモン補充だけでは対応しきれない部分があるという事実にもつながっています。

現在の治療とその限界

テストステロン補充療法(TRT)の有効性とリスク

LOH症候群の確立した薬物療法は テストステロン補充療法(TRT:Testosterone Replacement Therapy) です。テストステロンを外から補充することで、性機能・気力・筋肉量・骨密度などの改善が期待されます。日本では保険適用のある筋肉注射製剤(エナルモンデポー®など)が主流で、2〜4週間おきに投与します。

TRTの有効性に関する最新エビデンス (Xu Z et al., Frontiers in Endocrinology , 2024年1月; DOI: 10.3389/fendo.2024.1335146)

28件の臨床試験・計3,461名を統合した大規模な解析で、次のことがわかっています。

性機能(勃起機能)は改善する ――統計的に明確な効果が確認されています
前立腺への悪影響は認められなかった ――前立腺の大きさや排尿症状に有意な変化なし
倦怠感・気力・精神症状は個人差が大きい ――TRT単独ですべての症状が改善するわけではない
メタアナリシス(エビデンスの確実性:中程度)

TRTの主な期待効果

  • 性欲(リビドー)の回復
  • 勃起機能の改善
  • 骨密度の維持・改善
  • 筋肉量・筋力の改善
  • 気力・意欲の改善(一部)
  • 貧血の改善(赤血球産生の促進)

TRTの主なリスク・注意点

  • 前立腺への影響: 前立腺肥大症の症状悪化リスク。前立腺がんには禁忌
  • 多血症(赤血球増多): 血液粘度が上がり血栓リスクが上昇
  • 精巣萎縮: 外からの補充により自身の産生機能が低下
  • 長期継続の必要性: 中断すると症状が再燃しやすい
  • 定期的な血液検査・PSAモニタリングが必要

生活習慣改善とその他の薬物療法

テストステロンの低下に影響するストレス・睡眠・肥満・運動不足を改善することは、TRTと並行してすべての方に推奨されます。規則正しい有酸素運動と筋力トレーニングは、テストステロンの維持・改善に寄与することが複数の研究で示されています。また、精神症状が強い場合には抗うつ薬(SSRIやSNRIなど)の使用が検討され、性機能症状に対してはPDE5阻害薬(いわゆるED治療薬)が用いられることもあります。いずれも専門医の診察に基づいて選択されます。

補完的アプローチが求められる理由

TRTは適切な症例では有効な治療ですが、すべての方に適用できるわけではありません。前立腺疾患リスクのある方、将来的に子どもを希望する方(TRTはHPG軸を抑制して精子産生を減らす可能性があるため)、注射継続が難しい方、副作用を懸念する方など、TRTを選択しにくい状況は少なくありません。

現在の治療全体に残る課題: TRTは継続が前提で、中断すると症状が戻りやすい。精神症状・疲労感への効果は個人差が大きい。テストステロン値が参考範囲内の場合、保険適用のある薬物療法の選択肢が限られる。生活習慣改善のみでは効果の発現に時間がかかる。これらの課題に対して、漢方・鍼灸による補完的なアプローチが、ひとつの選択肢となり得ます。

中医学から見た男性更年期――「腎虚」という視点

中医学の言葉を理解するために

中医学では、西洋医学とは異なる言葉で体の状態を表します。難しく感じるかもしれませんが、基本の考え方はシンプルです。「腎(じん)」「気(き)」「陰陽」など、このページで出てくる言葉には、それぞれ説明を添えています。

中医学(漢方・鍼灸の理論的背景となる伝統中国医学)には「男性更年期障害」という病名はありませんが、その症状群は古くから「腎虚(じんきょ)」を中心とした概念で記述・治療されてきました。中医学が西洋医学と異なる最大の特徴は、「なぜその人にその症状が出ているのか」を体質の視点から個別に分析し、同じ症状でも体質が異なれば処方や施術を変えるという点です。

「腎(じん)」とは何か

中医学の「腎」は、西洋医学の「腎臓」とは別の概念です。中医学では腎を「生命エネルギーの貯蔵庫」と捉えます。生殖機能・成長・老化のプロセス・骨の強さ・脳の働きなどを担うとされており、加齢とともにこの貯蔵量が減っていくと考えます。男性の場合、テストステロン低下による症状の多くは、この「腎のエネルギー不足(腎虚)」として捉えられます。

「腎虚」にも種類があります。どのタイプかによって、漢方の処方も鍼灸のアプローチも変わります。以下が代表的な4つのパターンです。

パターン 01
冷え・頻尿・腰の弱りが目立つ方
腎陽虚(じんようきょ)
「温める力」が不足している状態

「陽(よう)」は体を温め、動かすエネルギーです。これが不足すると、冷えやすい・手足や下半身が冷える・頻尿・夜間尿が増える・腰や膝に力が入らない・性欲の低下・常に疲れている、という症状が現れます。加齢・慢性的な疲労・冷えた食事の過剰摂取などで生じやすいです。

パターン 02
のぼせ・口の乾燥・寝汗がある方
腎陰虚(じんいんきょ)
「潤す力」が不足している状態

「陰(いん)」は体を潤し、冷やすエネルギーです。これが不足すると、相対的に「熱」が余り、のぼせ・ほてり(特に午後以降に強い)・寝汗・口や皮膚の乾燥・耳鳴り・めまい・眠りが浅いといった症状が現れます。慢性的なストレス・過労・睡眠不足によって消耗した状態に相当します。

パターン 03
倦怠感・胃腸の弱りが目立つ方
気血両虚(きけつりょうきょ)
エネルギーと栄養が全体的に不足している状態

「気(き)」はエネルギー全般、「血(けつ)」は栄養・血液の巡りを指します。これらが慢性的に不足すると、疲れやすい・休んでも回復しない・気力がわかない・食欲不振・胃腸の弱り・息切れ・動悸・集中力の低下という症状が現れます。過労・不規則な食事・慢性的なストレスが続く方に多いです。

パターン 04
ストレス・イライラ・抑うつが強い方
肝気鬱結(かんきうっけつ)
気の流れが滞っている状態

中医学の「肝(かん)」は気(エネルギー)の流れを司ります。ストレスや感情の抑圧によってこの流れが滞ると、イライラ・怒りっぽさ・抑うつ気分・胸や脇腹の張り・ため息が多い・不眠(眠れない・夢が多い)・仕事や趣味への意欲低下が現れます。社会的役割の変化や長期的なプレッシャーを抱える方に多く見られます。

実際の臨床では、これらのパターンが複合して現れることが大半です。たとえば「腎陰虚+肝気鬱結」(のぼせ+イライラ)や「腎陽虚+気血両虚」(冷え+強い疲労感)など、組み合わせによってアプローチが変わります。タナココでは問診・舌診・脈診を通じて、お一人おひとりの状態を丁寧に分析します。

漢方・鍼灸によるアプローチ

「なぜこの症状が自分に出ているのか」を体質の視点から分析し、
根本から整えることがタナココの考える漢方・鍼灸の役割です。

漢方のアプローチ――腎の土台を整える

参考エビデンス(文献検索日:2026年5月26日)

LOH症候群の男性107名を対象に、補腎作用を持つ中薬製剤(複方玄駒カプセル)とプラセボ(偽薬)を比較した臨床試験(Zhang H et al., Medicine , 2025年; DOI: 10.1097/MD.0000000000041160 )では、3か月後に 性機能スコアの有意な改善 が確認され、改善率は71.9%でした。前立腺への影響や重篤な副作用は認められませんでした。
二重盲検RCT(エビデンスの確実性:低〜中程度)

日本の漢方医学(漢方)では、LOH症候群に相当する症状に対して、主に「補腎薬(腎のエネルギーを補う薬)」を中心とした処方が用いられます。どの処方が合うかは体質の「証(パターン)」によって異なります。

漢方 01
冷え・頻尿・腰下肢の弱りがある方(腎陽虚)に
腎陽を温め、生命エネルギーを補う

体力中等度以下で、冷えやすい・疲れやすい・腰や膝の力が入らない・頻尿・夜間尿が多い・性欲の低下がある方に用います。地黄・山薬・山茱萸・附子・桂皮などが腎の温める力を補い、下半身の機能を整えます。加齢による生殖機能・排尿機能の低下に対しても古典から用いられてきた処方です。

主な処方例 八味地黄丸(ハチミジオウガン)・牛車腎気丸(ゴシャジンキガン)
漢方 02
のぼせ・口の乾燥・不眠がある方(腎陰虚)に
腎陰を補い、余分な「熱」(のぼせ)を鎮める

体力が落ちてきた方の、のぼせ・ほてり・口や皮膚の乾燥・耳鳴り・めまい・眠りが浅いという症状に用います。温める生薬(附子・桂皮など)を含まない構成で、体を潤す力を補うことに特化します。慢性的な消耗・ストレス・睡眠不足が続いた後の状態に対応します。

主な処方例 六味地黄丸(ロクミジオウガン)・知柏地黄丸(チバクジオウガン)
漢方 03
倦怠感・食欲不振・胃腸虚弱が目立つ方(気虚)に
気を補い、消化吸収の力を立て直す

虚弱体質・慢性的な疲労・食欲不振・胃腸の弱りを伴う方に用います。黄耆・人参・白朮・柴胡などが気を補い、胃腸(消化機能)を整えます。「疲れているのに休めない」「気力だけでなく体力も落ちてきた」という方に向いています。男性更年期の意欲低下・倦怠感に対してもよく用いられます。

主な処方例 補中益気湯(ホチュウエッキトウ)・十全大補湯(ジュウゼンタイホトウ)
漢方 04
ストレス・イライラ・不眠・動悸がある方(肝気鬱結)に
気の滞りを解き、気持ちの波を整える

体力中等度以上で、神経過敏・緊張感が強く、ストレスが多い・イライラしやすい・不眠・動悸がある方に。柴胡・竜骨・牡蛎が気の滞りを解き、高ぶった精神状態を落ち着かせます。男性更年期に伴う抑うつ・不眠・イライラを主訴とする方に対応します。

主な処方例 柴胡加竜骨牡蛎湯(サイコカリュウコツボレイトウ)・桂枝加竜骨牡蛎湯(ケイシカリュウコツボレイトウ)
処方はこれらの代表的な一例です。実際にはお一人おひとりの体質(証)の分析に基づき、オーダーメイドで選択・調整します。現在の服薬内容(テストステロン注射・ED治療薬・抗うつ薬など)との相互作用も薬剤師が確認した上でご提案します。 自己判断での服用は避けてください。

鍼灸のアプローチ――自律神経と腎気に働きかける

参考エビデンス(文献検索日:2026年5月26日)

自律神経への効果 10件の臨床試験・計744名を統合した研究(Ma YZ et al., Frontiers in Neuroscience , 2025年; DOI: 10.3389/fnins.2025.1694110 )では、鍼灸が自律神経のバランスを整える効果が示されています。ほてり・発汗・不眠・動悸といった症状へのアプローチとして、研究上の根拠があります。

性機能への効果 鍼灸と性機能障害に関する複数の臨床研究をまとめた論文(Wang H et al., Translational Andrology and Urology , 2024年; DOI: 10.21037/tau-24-409 )でも、ポジティブな結果が報告されています。
メタアナリシス・文献レビュー(エビデンスの確実性:低〜中程度)
鍼灸 01
腎気を補い、体のエネルギーの根本を整える

腎経・督脈・膀胱経のツボに働きかけ、加齢による腎気の消耗を補います。下半身の活力を高めることを目指し、ライディッヒ細胞(テストステロン産生細胞)の機能環境への間接的なサポートが期待されます。

主なツボ:関元・気海・腎兪・命門・太溪
鍼灸 02
自律神経を整え、ほてり・発汗・不眠を和らげる

テストステロン低下による自律神経の乱れ(交感神経の過緊張)を鎮め、副交感神経優位の落ち着いた状態へ移行させます。ほてり・寝汗・入眠困難・中途覚醒など、自律神経症状の緩和を目指します。

主なツボ:三陰交・照海・復溜・神門・内関・百会
鍼灸 03
気血を補い、倦怠感・意欲低下を回復させる

慢性的な気血不足による疲労感・食欲不振・意欲の低下に対応します。胃腸(消化機能)を整えることで気の産生を促し、全身のエネルギー状態を底上げします。「疲れがとれない」「体が重い」という方の体力回復を目指します。

主なツボ:足三里・脾兪・胃兪・中脘・気海
鍼灸 04
気の滞りを解き、ストレスと気分の波を整える

ストレス・感情的な緊張による気の滞り(イライラ・抑うつ・胸の圧迫感)に対応します。気の巡りを整え、精神的な緊張を解放することで、気分の安定と意欲の回復を目指します。

主なツボ:太衝・行間・期門・肝兪・風池

よくある質問(FAQ)

男性更年期障害(LOH症候群)の診断はどのように行われますか?
AMSスコアという17項目の自己評価票で症状の程度を確認した上で、血液検査で総テストステロンおよび遊離テストステロンを測定します。日本泌尿器科学会・日本Men'S Health医学会の診療指針では、総テストステロン値250 ng/dL以下または遊離テストステロン値8.5 pg/mL以下を参考値としています。ただし施設・検査法によって解釈に差がある場合があり、採血は午前中(できれば11時まで)が推奨されます。うつ病・甲状腺疾患・睡眠時無呼吸症候群との鑑別も重要です。症状・検査値・生活背景を総合的に判断します。
「歳のせい」と思っているのですが、受診・相談すべきでしょうか?
「歳のせいだから仕方ない」と感じている方も多いですが、テストステロンの低下は自然な加齢の一部であると同時に、適切なアプローチで改善の余地がある状態です。倦怠感・気力低下・不眠・性機能の変化などが複数重なっているのであれば、一度ご相談を受けることをおすすめします。LOH症候群の長期放置は骨粗鬆症・筋力低下・代謝異常のリスクにもつながります。「病院に行くほどではないかも」という方も、タナココではまずお話をうかがうことから始められます。
病院でTRTを受けているのですが、漢方・鍼灸と併用できますか?
はい、可能です。TRTと漢方・鍼灸は基本的に両立できます。タナココでは現在の治療内容を確認した上で、相互作用に配慮した処方を薬剤師がご提案します。TRTで一定の効果を感じながらも、倦怠感・精神症状・睡眠障害が残っている方にも、補完的なサポートをお伝えできます。
男性更年期障害に漢方・鍼灸は効果がありますか?エビデンスはありますか?
LOH症候群に関連する性機能の低下や自律神経症状に対して、漢方・鍼灸の補完的な効果は複数の臨床研究で報告されています(詳細は本ページ第7章参照)。いずれも小規模研究が多くエビデンスの確実性は「低〜中程度」ではありますが、「効果がない」のではなく、「大規模な検証がまだ追いついていない」という意味であり、長い臨床の歴史のなかで多くの方が実感をもって効果を報告していることも事実です。中医学では「なぜその人にその症状が出ているのか」を体質(証)から読み解く弁証を重視し、個々に合った処方・施術を行います。効果には個人差がありますが、標準治療と組み合わせた補完的な選択肢として、検討する価値は十分にあります。
テストステロン値は正常範囲と言われましたが症状があります。漢方・鍼灸の対象になりますか?
はい、対象になります。テストステロン値が参考範囲内でも自覚症状を抱えているケースは少なくありません(このような状態を便宜的に「機能的LOH」と呼ぶ研究者や医師もいますが、公式なガイドラインで定義された診断名ではありません)。西洋医学的にTRTの適用が難しい場合でも、中医学の視点からは体質(証)に基づくアプローチを検討できます。問診・舌診・脈診を通じて現在の体質状態を分析し、適切な処方・施術をご提案します。
うつ病・自律神経失調症と診断されているのですが、LOH症候群の可能性はありますか?
LOH症候群・うつ病・自律神経失調症は症状が重複するため、専門的な評価なしに自己判断することは難しいです。血液検査によるテストステロン値の確認が鑑別の一助になりますが、うつ病の診断は精神科・心療内科で行うことが重要です。タナココでは、精神科・心療内科や泌尿器科での診療と並行する形での漢方・鍼灸サポートも可能です。現在の状態をお聞かせいただければ、適切な受診先のご案内も含めてお話しします。

「歳のせい」で終わりにしない、ということ

倦怠感、気力の低下、眠れない夜、思うようにならない体——それらを「仕方のないこと」と受け入れてきた方に、お伝えしたいことがあります。

テストステロンの低下は自然な加齢のプロセスですが、その影響の大きさは一人ひとり異なります。症状がある方には、症状に向き合う手段があります。西洋医学のホルモン補充だけが選択肢ではなく、体質の土台から整える漢方・鍼灸というアプローチを、私たちは大切にしています。

タナココには、薬剤師と鍼灸師の国家資格を持つ専門家が、現在の状況を踏まえながら、中医学の視点でお一人おひとりの体質を丁寧に読み取り、処方・施術を選びます。「何をやっても変わらなかった」「どこに相談すればいいかわからなかった」という方も、まずはご相談ください。あなたの状態を一緒に整理することから始めます。

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