
胎盤が早くはがれるリスクと「暑い日の影響」を日本全国のデータで調べた研究です。
妊娠中は、食べ物や運動だけでなく、天気や気温にも気をつけたほうがいい──
今回紹介するのは、「とても暑い日」が妊婦さんに与える影響について、全国のデータを使って詳しく調べた研究です。
特に注目されたのは、「胎盤が出産前にはがれてしまう」というとても危険な状態が、暑い日のあとに起こりやすくなるのかどうか。これはお母さんと赤ちゃんの命にかかわる重大なことです。
日本の11の地域で、約70万人分の出産データを使って調査されたこの研究は、「暑さ」と「妊娠中のトラブル」の関係を、これまでになく詳しく明らかにしました。
では、この研究がどんなことを明らかにしたのか、順を追って見ていきましょう。
🩸 胎盤がはがれるってどういうこと?
胎盤は、お母さんの体と赤ちゃんをつなぐ大切な「命の通路」。おなかの中で、赤ちゃんに酸素や栄養を届ける役割をしています。
本来、胎盤は出産が終わってから自然にはがれるものです。ところが、まれに出産前に胎盤が子宮からはがれてしまうことがあります。これを「胎盤早期剥離(たいばんそうきはくり)」と呼びます。
この状態になると、お母さんが大量に出血したり、赤ちゃんに酸素が届かなくなったりして、命にかかわる危険が高くなります。実際に、日本では出産の約100件に1件ほどの割合で起きており、赤ちゃんが亡くなることも少なくありません。
とても深刻なこの状態が、もし「暑さ」と関係しているのだとしたら、予防のヒントになるかもしれません。今回の研究は、まさにそこを明らかにしようとしたものです。
☀️ 暑さが体に与える影響とは?
夏の暑い日は、誰でもしんどく感じるものです。体は汗をかいて熱を逃がそうとがんばりますが、それには限界があります。
とくに妊娠中の体は、普段よりも熱をつくりやすく、しかもその熱を逃がしにくくなっています。おなかの赤ちゃんの成長にもエネルギーが使われるため、体が熱を持ちやすくなるのです。
こうした中で、強い暑さや湿気、風が弱い状態が重なると、体に大きな負担がかかります。これを「熱ストレス」と呼びます。炎天下の中での外出や、風通しの悪い場所で長く過ごすことが「熱ストレス」にあてはまります。
この研究では、「とても暑かった日」を、気温や湿度、風、日差しの強さなどを組み合わせた数値で判断しています。その日が妊婦さんの体にどんな影響を与えたのかを調べたのです。
🔍 どんなふうに調べたの?
研究チームは、日本全国の産婦人科病院から集められた約70万人分の出産データを使いました。対象は、夏の間(6月から9月)に出産した方たちで、その中から「胎盤が早くはがれた」症例を約7000件見つけ出しました。
それぞれの妊婦さんが出産した日の前に、とても暑い日があったかどうかを調べ、「暑さがあった日のあとに、胎盤がはがれるケースが増えていたか?」を分析しました。
そしてこの研究では、ただの気温だけではなく、湿度や日差し、風の強さも加味した「総合的な暑さ指数」を使ったのが特徴です。そして、「その日の暑さが影響したのか」「翌日や数日後に影響が出たのか」といった時間のずれも細かく調べています。
さらに、特別な体の状態にある妊婦さん──たとえば血圧が高い人や、おなかの赤ちゃんが小さめの人については、影響がより強く出ているかも調べました。
⚡ 翌日に注意!
調査の結果、「とても暑い日」の翌日に、胎盤がはがれるリスクが明らかに高まっていることがわかりました。その増加はなんと約1.2倍。これは決して小さな数字ではありません。
つまり、暑さにさらされたその日は体に大きな変化はなくても、次の日になって体調が崩れ、重大なトラブルが起きることがあるということです。
興味深いのは、その次の日(2日後)になると逆にリスクが下がっていた点です。これは暑さによって、本来なら2日後に起こっていたかもしれない症例が前倒しで発生し、結果として「暑い日の翌日」にリスクが集中して高まったのではないかということです。
そして、1週間を通してみた場合、「暑さによってトラブルが増え続ける」というよりは、「短い期間に集中して起きやすくなる」傾向があるようです。
🚨 体に持病がある妊婦さんはもっと注意
今回の研究で、特に暑さの影響を受けやすい人がいることも分かりました。
たとえば、血圧が高めの妊婦さんでは、暑い日の翌日に胎盤がはがれるリスクが、健康な妊婦さんよりも高くなっていました。また、おなかの赤ちゃんが小さめに育っている人も、同じようにリスクが大きくなっていました。
これは、体の中で赤ちゃんに送る血の流れが元々少なくなっている人たちが、暑さによってさらに流れが悪くなり、胎盤が弱ってしまうことが関係していると考えられています。
つまり、すでに体に何かしらの負担がかかっている妊婦さんほど、暑さの影響を強く受けやすいということです。
そういう方は、特に気温が高くなる日には体調にいつも以上に注意して、無理をせずに過ごすことが大切です。
🩺 医学の視点から見たポイント
この研究では、暑さの影響を単に「気温」だけで測るのではなく、湿度、風、日差しといった複数の要素を組み合わせた「総合的な暑さの指標(WBGT)」を用いて評価している点がとても優れています。これにより、実際に体が受けるストレスの程度を、より現実に近いかたちで捉えることが可能になりました。
さらに、日本全国から集められた大規模な出産記録を活用しており、研究結果の信頼性が高いことも特筆すべき点です。暑さの影響が翌日に強く現れること、そして体に持病のある妊婦さんほどリスクが高まることが、医学的に筋の通った形で示されました。
一方で、この研究には注意すべき点もあります。
個々の妊婦さんが実際にどれくらい暑さを体験していたかまでは分からないため、たとえば涼しい室内で過ごしていた人と、屋外で暑さにさらされていた人とでは、実際の影響が異なる可能性があります。こうした生活環境の差はデータには含まれていないため、結果の一部には誤差があるかもしれません。
医学的に見て、暑さによって体内の水分が減ること(脱水)や血の流れが悪くなることは、胎盤の機能を弱め、はがれやすくする要因になり得ます。つまり、暑さそのものが直接的な原因ではなくても、体への負担が結果的に胎盤トラブルを引き起こす可能性があるということです。
🌿 中医学の考え方とあわせてみると
中医学では、妊婦さんの体において「気(き)」と「血(けつ)」というエネルギーと栄養の流れがとても重要とされています。これらが体内をスムーズに巡ることで、おなかの赤ちゃんも健やかに育ちます。
適度な温かさは、気や血の巡りを助ける働きがありますが、夏の強い暑さとなると話は別です。中医学ではこれを「暑邪(しょじゃ)」と呼び、体に悪影響を与える邪気の一種と見なします。暑邪は体から水分(津液)や栄養(血)を消耗させ、結果として「血」の不足や、体の内側が乾いた状態(陰虚)を引き起こし、胎盤の働きが弱くなりやすくなると考えられています。
また、強すぎる暑さは、発汗や精神的なイライラ、不眠などを通じて、「気」の流れ(気機)を乱す原因にもなります。これにより、気の滞り(気滞)が起こり、おなかの張り感や血の巡りの悪さにつながることもあります。
これは、現代医学における「脱水」や「血流障害」、あるいは「自律神経の乱れ」といった概念と重なる部分です。暑さによって体のバランスが崩れるという点で、中医学と西洋医学の視点は一致しています。
つまり、どちらの医学的視点から見ても、「強い暑さ」は妊婦さんにとって無視できないリスクであることがわかります。
🤱 まとめ
今回の研究は、「とても暑い日」のあとに、妊娠中の大切なトラブル──胎盤がはがれてしまうリスク──が高まることを、明らかにしてくれました。特に、血圧が高めの方や、赤ちゃんが小さめな方など、もともと体に不安がある妊婦さんほど、その影響を強く受けやすいことも示されています。
だからこそ、暑さが厳しい季節には、体に余計な負担をかけないよう心がけることがとても大切です。涼しい環境で過ごすことや、こまめな水分補給、そしていつもと違う体調の変化に気づく感覚を大切にすること。それが、赤ちゃんとご自身を守るための大きな助けになります。
暑さが続く日々には、小さな工夫と意識が安心につながります。無理をせず、自分の体と赤ちゃんのために、日々のケアを大切にしていきましょう。
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