こんにちは、相模原タナココ漢方薬局・鍼灸接骨院です。
「自己免疫疾患」とは免疫系が正常に機能しなくなり、体が自分の組織を攻撃してしまう病気ですが、その一つに「寒冷凝集素症(CAD)」という病気があります。
「寒冷凝集素症(CAD)」は、自己免疫性溶血性貧血の1つで、重篤な慢性希少血液疾患です。
赤血球に反応する「寒冷凝集素症」という自己抗体が、赤血球に結合することで、赤血球が凝集し、溶血性貧血(赤血球が破壊されるなど、赤血球の寿命が短縮した状態)をきたします。
<寒冷凝集素症における赤血球凝集>(MSDマニュアルプロフェッショナル版より引用)
この自己抗体は、低温下で活性化する特徴があり、37℃未満で赤血球に結合することで赤血球が固まります。この時免疫機構に関わる蛋白質である補体も結合します。
この反応は可逆的であるため、37℃以上に加温すると赤血球から離れていきます。この時「補体*」だけが赤血球に残ります。
補体*:生体に侵入した病原微生物などの抗原を排除するための抗体の働きを補完する蛋白質の総称。抗原と抗体が反応してできる抗原抗体複合体と反応して病原微生物を破壊したり、貪食細胞を呼び寄せて貪食させたりする。
「補体」が結合した赤血球が血管の外(脾臓や肝臓)に出ると、マクロファージなどの細胞に貪食され破壊されたり、補体の活性化により血管内で赤血球が壊されたりすることで、赤血球が溶血を起こし、その結果「貧血」になります。
原因としては、原因が不明の「特発性」と、感染症などの結果起こる「続発性」のものがあります。
「続発性」のものとしては、マイコプラズマ肺炎、伝染性単核球症(EBウイルス感染)などの感染症や、リンパ形質細胞性リンパ腫(LPL)、慢性リンパ性白血病(CLL)などの血液の疾患があります。
症状としては、血液が固まることで起こる循環障害による手指・足の末端、鼻や耳の痛みと変色(チアノーゼ)や感覚異常、皮膚の網状皮斑などがあります。
感染がきっかけで発症する「寒冷凝集素症(CAD)」は通常2~3週間で通常の状態に回復し予後は良好と言われていますが、特発性の場合は、血栓塞栓症や死亡リスクの上昇が明らかになっています。
これまではこの病気に対して確立された治療法はなく、今まで使用されていたリツキシマブ、フルダラビン、ベンダムスチン、ステロイドなどは副作用も多く使用しにくいことが問題とされていました。そのため、寒冷を避け十分に保温を行うことで対処していました。
最近、この疾患に対する薬が発売されました。「エジャイモ(一般名:スチムリマブ)」という薬で、補体活性化経路を選択的に阻害する薬です。
使用することで速やかな溶血を抑え、治療開始後 1 週間以内に貧血や疲労の改善が見られています。
一方でその作用機序から髄膜炎菌、肺炎球菌などの感染症が発症する可能性があるため、必要に応じてワクチンの追加接種が必要な場合があります。
また、溶血で輸血が必要と考えられる患者さんが対象とされるため、軽度の場合は使用できない可能性があります。
他の疾患での研究ですが、末梢の循環障害によるレイノー症状に漢方を用いて、血流量の回復時間の短縮、血漿粘度の低下が期待できるとする報告があることから、症状の緩和に用いられることもあります。
西洋医学的な解明が進み、薬が開発されて治療法がなく苦しんでいた方への選択肢が増えるのは喜ばしいことです。ただ、薬には副作用もあり、服用しにくい、使用しにくいケースもあります。また効果が十分に見られないこともしばしばあります。
西洋医学的に治療法がない、少ない、限られている場合でも、中医学的なアプローチが可能な場合があります。難しい病気でも、西洋医学的な治療と合わせて漢方での治療を組み合わせることで、症状のコントロールがうまくいくこともありますので、そのような時は、漢方との組み合わせも選択肢の1つとして考えていただけたらと思います。
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