円形脱毛症の漢方治療

こんにちは、相模原タナココ漢方薬局・鍼灸接骨院です。

 

前回は円形脱毛症の西洋医学的な認識と治療について説明しましたが、今回は中医学的に見た円形脱毛症についてです。

 

「円形脱毛症」とは西洋医学的な呼び方で、中医学では「油風」や「鬼舐頭」と呼ばれています。

中医学では、毛穴が開き、風邪が入り込み、風盛燥血となり、毛髪に栄養が届かずに引き起こされると考えられています。

 

辛いもの、甘いもの、味が濃いものの過食、ストレスなどにより体に「火」が発生し、陰血が失われ、血熱生風し、風熱が頭部に達し、毛髪の陰血の滋養を受けることができずに脱毛します。

あるいは、ケガなどで、瘀血が生じ血の流れが滞り、清竅(頭部にある7つの竅)が栄養を失い脱毛します。

あるいは、病気を長く患うことで、気血両虚、肝腎不足となり、精が血に変わることができず、血による毛髪の栄養が不十分となり、肌腠も潤いを失い、毛髪の成長の源がなくなることで、毛根が空虚となり、毛髪は抜け落ちます。

 

毛髪が突然の抜け落ち、その部分の皮膚は滑らかで、残っている毛髪も老けやすくなります。毛は毛根が萎縮したり、毛が上が太く下が細い感嘆符(!)のような形状になります。脱毛の形は、円形、楕円形、または不規則です。

生じる大きさや数は人それぞれですが、融合したり範囲が広がったりすることもあり、重症の場合は、頭部にとどまらず、眉毛や体毛なども抜け落ちます。

多くの場合、過労、睡眠不足、精神的ストレスののちに起こります。

治療には時間がかかることが多く、数ヶ月から数年続くことがあります。自然治癒するケースもありますが、再発例やなかなか治らないケースもあります。

症状が改善する際は、発毛時は細くて柔かいからはじまりますが、次第に太く黒くなってきます。

 

中医学的な分類は大まかに以下のような内容となります。

 

1 血熱風燥

辛いものの過食や、情志抑郁により、熱が生じて陰血を耗傷し、血熱生風となり風熱が頭部に到達します。気血が調和を失い、毛髪が栄養を失うので、突然脱毛が見られます。頭皮はかゆみや熱感があります。肝郁化火となるため、心煩易怒、急躁不安となり、舌苔は薄く、脈は弦脈となります。これらは血熱風燥のあらわれです。

治療法は、涼血熄風、養陰護発で、処方は四物湯合六味地黄湯加減を用います。
もし、風熱偏勝で、脱毛が激しい場合は、養血散風、清熱護発とし、神応養真丹を用います。

 

2 気滞血瘀

病気の経過が長く、脱毛する前に、頭痛や胸脇の痛みがなどがあり、悪夢を見ることがあったり熱っぽくて不眠気味のことがあり、舌には瘀斑がみられ、脈は沈細となります。

思い悩むことが多かったり、ケガや持病があり瘀血が生じ、頭竅や胸脇を阻滞します。病程は長く、脱毛が見られる前には、頭痛や胸脇部などに痛みがあります。気滞血瘀となり、栄養が得られず、脱毛します。瘀滞は鬱熱を産み心神を内擾するため、悪夢を見ますし、煩熱により不眠となります。舌には瘀斑がみられ、脈は沈細となります。これらは気滞血瘀のあらわれです

治療法は通竅活血で、処方は通竅活血湯加減を用います。

 

3 気血両虚

病後や産後にみられます。病後は気血虚弱となり、そのため毛髪は栄養を失い、斑塊状に脱毛し、次第に悪化します。小さい部位の箇所もあれば、大きい部位の箇所もあります。毛髪はやせ細り、容易に抜け落ちます。血虚のため唇の色も青白く、動悸がみられ、気虚でもあるため息切れ、話すのもおっくうで、倦怠感もあります。舌は淡で、脈は細弱となります。これらは気血両虚のあらわれです。

治療法は益気補血で、処方は八珍湯加減を用います。

 

4 肝腎不足

虚弱体質あるいは過労により肝腎不足となり、精血が虧虚し、毛髪が栄養を受けられずに、脱毛が見られます。もともと白髪が多く、脱毛は均一に見られることが多く、また、全身に脱毛が見られることがあります。肝腎不足で清竅・筋絡が栄養不足となれば、耳鳴り、ふらつき、めまいなどがみられ、足腰に力が入りにくいなどの症状もおこります。舌は淡で、苔は剥離し、脈は細となります。これらは肝腎不足のあらわれです。

治療法は滋補肝腎で、処方は七宝美髯丹加減を用います。


以上が中医学的な円形脱毛症の説明になりますが、日本では、柴胡加竜骨牡蠣湯、桂枝加竜骨牡蠣湯、加味逍遙散、補中益気湯、十全大補湯、半夏厚朴湯などが試され、特に柴胡加竜骨牡蠣湯、桂枝加竜骨牡蠣湯、加味逍遙散が頻用されています。

日本での漢方治療では、自律神経の失調、つまり「気」の異常を主な原因として、いわゆる「気剤」を中心とした処方が選択され、このほか胸脇苦満が伴えば、免疫調整作用を有する柴胡剤が用いられることが多いようです。

また、処方は実証、中間証、虚証ごとに用いられ、実証には柴胡加竜骨牡蠣湯、中間証には小柴胡湯、抑肝散、抑肝散加陳皮半夏、虚証には桂枝加竜骨牡蠣湯などが選択されているようです。水毒があれば五苓散が用いられることもあります。

このほか体調に合わせて必要な処方を併用しながら治療を行います。

 

円形脱毛症の治療を漢方で行う場合は、時間がかかることも多いためそれを理解して治療に望むことが必要です。

進行中の時期であれば、服用していても脱毛が進みますが、漢方薬が効果的な場合、発毛する前には体の不調(精神症状、胃腸の不調、冷えなど)の全身症状が改善することが多いので、治療が効果的かどうか判断の目安になります。

中医学、東洋医学的な治療では、円形脱毛症のような局所の変化でも、その原因は体の内部にあると考え、内部環境を整えることが重要と考えます。体の内部環境を整えるためには、時間がかかりますので、なかなか効果が現れなくても継続して服用することが重要です。

 

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