不妊治療が令和4年4月から保険適用されました
不妊症とは
日本産科婦人科学会における不妊症の定義は
「生殖年齢の男女が妊娠を希望し、ある期間避妊すること無く性交渉をおこなっているのにもかかわらず、妊娠の成立を見ない場合を不妊といい、妊娠を希望し医学的治療を必要とする場合」
「明らかな不妊原因が存在する場合は不妊の期間にかかわらず不妊症としても差し支えない。」
としています。
不妊治療の流れ
まず不妊症の原因を探るための問診・検査等を行い、不妊の原因が判明した場合は治療を行います。原因が不明の場合は、一般不妊治療(タイミング法及び人工授精)や生殖補助医療(ART)を実施します。
第497回 中央社会保険医療協議会資料より
* 不妊に悩むという点で、事実婚の場合も法律婚の夫婦とで変わりはないことから、令和3年1月からの助成拡充に当たり、社会保険制度における取扱いを参考に、事実婚の場合も助成の対象に含むことにしています。事実上の夫婦関係の存否の確認に当たっては、治療当事者両人の
・ 戸籍謄本(入籍状況の確認)
・ 住民票(同一世帯であるかの確認)
・ 事実婚関係に関する申立書
の提出が必要で治療の結果、出生した子について認知を行う意向があることの確認が必要とされています。
不妊治療のスケジュール
不妊治療での通院日数は状況により変わります。一般不妊治療(タイミング法、人工授精)については、排卵周期に合わせた通院が必要となり、高度生殖補助医療(ART:体外受精、顕微授精)では、女性は頻繁な通院が必要となります。
不妊症の検査
不妊症の原因について男性、女性ともに問診や診察・検査等を実施します。
不妊症の原因疾患
検査等により原因となる疾患が判明した場合には治療を行います。
一般不妊治療
原因不明の不妊の一般不妊治療には排卵の時期を調べて受精に最適なタイミングを合わせる「タイミング法」と、排卵のタイミングに合わせて精製した精子を子宮に注入する「人工授精」があります。
生殖補助医療(ART:Assisted Reproductive Technology)
卵子と精子、あるいは胚を体外で取り扱う治療を生殖補助医療と呼び、体外受精と顕微授精があります。生殖補助医療には以下のステップが必要となります。
① 卵子を採取する(採卵)
② 精子を採取する(採精)
③ 卵子及び精子を受精させる(体外受精・顕微授精)
④ 作成した受精卵を培養する(胚培養)
⑤ 胚を移植する(胚移植)
また、それぞれのステップには以下のような内容な選択肢があります。
保険適用について
国は、少子化社会対策として、不妊治療の経済的負担の軽減を図るため、高額の医療費がかかる不妊治療(体外受精、顕微授精)に要する費用に対する助成を行うとともに、適応症と効果が明らかな治療には広く医療保険の適用を検討し、支援を拡充することにしました。このことにより、2022年4月から、これまで保険適用外であった一般不妊治療(タイミング法、人工授精)や生殖補助医療が新たに保険適用となりました。
生殖医療ガイドラインの推奨度と保険適用
今までの生殖医療は、十分なエビデンスが構築される前に実際の診療に導入されることが多く、研究と臨床が同時進行しながら発展してきた背景があります。そのため治療が標準化されておらず、必ずしも有効性・安全性が明らかでないものもありました。過去に積極的に行われていた治療で、現在は効果がないとして行われていないものもあります。
そのため保険適用するにあたり、ガイドラインが作成され、推奨度A~Bに該当する治療が新たに保険適用となりました。
保険診療での不妊治療の対象年齢・回数
保険適用の対象年齢及び回数には制限が設けられています。これまでの特定治療支援事業と同様の要件になりました。
保険適用となった医療用医薬品
不妊治療に使用される医薬品については有効性及び安全性確認し以下の目的で使用されることになりました。医薬品の中には適応外使用(添付文書に効能等の記載がされていない場合)であっても保険適用が認められているものもあり以下はそれらの医薬品も含まれています。
【調節卵巣刺激の開始時期の調整】
ジュリナ、ルトラール、デュファストン、ノアルテン、ヒスロン、ヤーズフレックス、ルナベル、プラノバール、ジェミーナ、エストラーナ、ディビゲル、ル・エストロジェル
【調節卵巣刺激】
フェマーラ、ゴナールエフ、レコベル、クロミッド、精製下垂体性性腺刺激ホルモン、ヒト下垂体性性腺刺激ホルモン
【早発排卵の防止】
デュファストン、ヒスロン、ガニレスト、セトロタイド、ナサニール、スプレキュア
【卵胞成熟及び黄体化】
デュファストン(卵胞成熟のみ)、スプレキュア、オビドレル、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン
【黄体補充】
ルトラール、ウトロゲスタン、ルティナス、ルテウム、ワンクリノン、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン、デュファストン
【卵巣過剰刺激症候群の発症抑制】
カバサール
【凍結融解胚移植におけるホルモン補充周期】
ジュリナ、エストラーナ、ディビゲル、ル・エストロジェル
【一般不妊治療における排卵誘発及び黄体化】
ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン
【多嚢胞性卵巣症候群における排卵誘発】
メトグルコ、フェマーラ
【原因不明不妊における排卵誘発】
フェマーラ
【多嚢胞性卵巣症候群における調節卵巣刺激】
メトグルコ
【勃起不全(満足な性行為を行うに十分な勃起とその維持が出来ない患者)】
バイアグラ、シアリス
(保険適用の対象は、勃起不全による男性不妊の治療を目的として、一般不妊治療におけるタイミング法に用いる場合)
【乏精子症における精子形成の誘導】
クロミッド
【低ゴナドトロピン性男子性腺機能低下症における精子形成の誘導】
ゴナールエフ