清肺排毒湯をはじめとする漢方治療の考え方 予防処方と清肺排毒湯の効果

漢方のお問い合わせが増えておりますが、清肺排毒湯やその他の漢方については下記よりお問い合わせください。

問い合わせ 相模原 漢方薬局 鍼灸 接骨院

 

 


 

日本感染症学会より「(特別寄稿)COVID-19感染症に対する漢方治療の考え方(改訂第2版)」が出されました。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の漢方治療については、2月に中国の診療ガイドラインについてご紹介していましたが、上記の特別寄稿においても、中国の診療ガイドラインを参考に書かれています。

 

お問い合わせの中で、「何で漢方薬局と病院で処方が違うのか?」というご質問がありますが、特別寄稿の処方はツムラの医療用漢方製剤を限定とした組み合わせでの記載と思われます。

医療用漢方製剤と漢方薬局で扱える漢方製剤は共通するものをありますし、漢方薬局だけにしかないものもあります。

そのため、病院の漢方でできることと、漢方薬局の漢方でできることには違いがありますので、病院での処方と漢方薬局での対応は異なることがあります。

また、予防的な処方を希望する場合は自費となりますのでご注意ください。

 

では特別寄稿の内容の予防についての補足と清肺排毒湯について以前の記事の内容に情報を追加しながらみていきたいと思います。

 

予防については小川 恵子医師の提案にありますとおり、中国のガイドラインには記載されていませんが、西洋医学的な研究により使用できそうな処方があります。

補中益気湯十全大補湯です。

補中益気湯(ほちゅうえっきとう):動物実験でインターフェロンの産生抑制、IL-1α、IL-6の産生を抑制。

十全大補湯(じゅうぜんたいほとう):ヒトでNK 細胞機能改善、抑制系活性の可能性があり、過剰な炎症の予防も予想される。

この2つの処方は、新型コロナに限らず「免疫力を上げる」ということで定期的に話題になる処方です。あえて「免疫力」という言葉を使用していますが、免疫システムに働きかけるような場合に「免疫力を高める」と表現されることが多いようです。

しかし、生き物の免疫システムは非常に複雑です。単に補中益気湯を服用したから、十全大補湯を服用したから大丈夫というものではありませんので、服用しても安心せずにバランスの良い食事、十分な睡眠など日々の生活を整える必要があります。漢方の効果を十分に発揮させるためにはからだをいたわる「養生」が重要です

また、お問い合わせで多いのが「補中益気湯」と「十全大補湯」の使い分けについてです。

補中益気湯と十全大補湯は、保険診療においては下記のような症状に使用する漢方です。(漢方薬局での使い方とは異なることがあります。)

 

補中益気湯(ツムラの場合)の効能・効果は

消化機能が衰え、四肢倦怠感著しい虚弱体質者の次の諸症:
夏やせ、病後の体力増強、結核症、食欲不振、胃下垂、感冒、痔、脱肛、子宮下垂、陰萎、半身不随、多汗症

十全大補湯(ツムラの場合)の効能・効果は

病後の体力低下、疲労倦怠、食欲不振、ねあせ、手足の冷え、貧血

 

効能・効果についての違いは上記のようになります。

補中益気湯は普段から胃腸が弱い方、十全大補湯はさらに虚弱の方に使われることが多いですが、どちらが適切かは、購入先で相談した方がより適切な処方を選んでもらえます。

また上記のような状態で使用する以外は、おそらく2/3の量でも効果は期待できると思います。

 

清肺排毒湯(せいはいはいどくとう)(軽症〜重症)

中国のガイドラインでは幅広い病態に使用ができるとしている処方です。

清肺排毒湯は麻杏甘石湯+五苓散+小柴胡湯+射干麻黄湯の組み合わせたものを基本しています。このほかに、小青竜湯加石膏湯や厚朴麻黄湯、越婢加半夏湯などの方意も見え隠れしています。

 

清肺排毒湯は日本にはもちろんありませんのでこれをどうやってエキスで作るかということになります。

「麻杏甘石湯+胃苓湯+小柴胡湯加桔梗石膏」を提案されていますが、胃苓湯は平胃散と五苓散を合わせた処方で、小柴胡湯加桔梗石膏は文字通り、小柴胡湯+桔梗石膏の組み合わせです。「麻杏甘石湯+胃苓湯+小柴胡湯加桔梗石膏」をわかりやすく分解すると「麻杏甘石湯+平胃散+五苓散+小柴胡湯+桔梗石膏」となりますが、清肺排毒湯の一部の処方である「射干麻黄湯」が含まれていないことに注意してください

 

また、中国のガイドラインでは、「清熱」働きである「石膏」の量に幅をもたせています。「石膏」は「肺の熱」をとる生薬です。(他にも麻黄と一緒に使うことで別の働きもあります。)

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肺炎の程度に応じて「石膏」を調整していることがわかりますが、上記のエキス剤ではこのような調整は難しいと思われますので、細かく調整が必要な場合は煎じ薬で作るのが良さそうです。

 

清肺排毒湯は軽症〜重症まで用いることができるとされていますが、これはあくまでも中国での使用方法です。中国では、新型コロナウイルスに陽性で、基本的には病院内で処方され、西洋医学と併用する環境で使用しています。

新型コロナウイルス感染症で問題になるのは、はじめは軽症でも急に重症化することがあることです。

日本で漢方を使用するのは、おそらく自宅待機中、経過観察中だと思いますが、服用していても悪化傾向にある場合は医療機関に連絡し速やかに対応の指示を仰ぐ必要があります。

そして、残念なことに自宅待機中に症状が悪化し、亡くなられるというケースも報告されています。

 

「清肺排毒湯」は漢方薬局で作ることが許可されている煎じ薬の処方ではありませんが、日本で許可されている煎じ薬の処方で、エキス剤より清肺排毒湯に近づけることができます。

煎じる手間はかかりますが、煎じ薬はエキス剤より効果的ですし、煎じ薬をご用意いただくというのも一つの方法です。

煎じ薬については煎じ方の説明などもありますので、お問い合わせください。

 

問い合わせ 相模原 漢方薬局 鍼灸 接骨院

 

清肺排毒湯は中国で症例集積研究の報告があり、その効果が劇的なため話題になっている処方です。

その報告によると服用期間は9日間であり、基本的には短期集中型の処方と考えられます。

ガイドラインでは、症状が見られたら、(服用後の体調悪化がなければ)3日間服用し、症状が軽快した場合は、その症状がどのくらい残っているかでもう3日間追加で服用するかどうか決めるというのが服用方法としています。

 

清肺排毒湯の効果について報告した「清肺排毒汤治疗新型冠状病毒肺炎的临床疗效观察」によると、症状の改善度は以下のようになっています。

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中医証候のスコア(グラフ右側の数値)が減少=症状の改善

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発熱、咳嗽、気喘、乏力

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面色、気短、舌象、脈象

「清肺排毒汤治疗新型冠状病毒肺炎的临床疗效观察 中药药理与临床中药药理与临床 2020; 36(1)」より引用

 

別の報告では2週間弱の服用が報告されていたりもしますが、やはり長期服用は避けるべきだと思いますし、効果がなければ違う原因を探るべきだと思います。

 

最近では「無症状、あるいは軽症のほうが放出するウイルス量は高い」とする報告もあります。

清肺排毒湯は構成処方や生薬の種類からやはり「肺炎」の処方ですので軽症例には他の処方が良いと考えていますが、一方で中国からの報告では、清肺排毒湯は新型コロナウイルスの複製を阻害し、また過剰な免疫応答を緩和させるとあることから、通常の漢方の使い方とは異なりますが、最悪の状態を避けるために軽症例や症状の初期の状態に服用するのもやむを得ないのかもしれません。

このような考えには異論がある方も多いと思いますが、いかにして最悪のケースを防ぐかというのが最も重要だと思いますので、服用については個別の相談の上対応していくことになると思います。

まずはご相談ください。

 

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