認知症と漢方・鍼灸

認知症と漢方・鍼灸|症状・発症メカニズム・中医学アプローチ|相模原 タナココ
認知症 / 漢方・鍼灸アプローチ

少しずつ薄れていく記憶──
認知症と、今できることのすべて

日本国内の65歳以上の認知症有病者は約443万人(2022年時点)。さらに、その予備軍とされる軽度認知障害(MCI)の方が約559万人にのぼると推計されています。認知症は、もはや一家族だけの問題ではありません。

最新研究が明らかにする発症メカニズム、現代医学の治療とその限界、そして中医学が2000年以上積み重ねてきた「脳と体の巡りを整える」漢方・鍼灸アプローチ。
タナココでは、薬剤師・鍼灸師の国家資格を持つ専門家が、西洋医学と漢方・鍼灸の両面から、一人ひとりの状態に合わせたサポートを行います。

最終更新日:2026年5月28日

認知症の病態理解と漢方・鍼灸による体質改善アプローチ

認知症の現状と社会的背景

認知症とは、記憶・判断力・言語・見当識(いま自分がどこにいるか・何年何月かを把握する能力)などの認知機能が低下し、日常生活に支障をきたす状態の総称です。特定の一つの病気ではなく、さまざまな原因疾患によって引き起こされる「症候群」です。

2022年時点での国内調査では、65歳以上の認知症有病者は約 443万人 と推計されています。注目すべきは、認知症の一歩手前の段階である 軽度認知障害(MCI)の方が約559万人 にのぼる点です。MCIは適切なアプローチによって症状の改善や発症遅延が期待できる段階であり、この段階でのケアが非常に重要な意味を持ちます。

認知症は本人のみならず、介護する家族の生活にも深刻な影響を与えます。「なんだかおかしいかな」と感じた時点で、状態を把握し、できることを早めに始めることが、その後の経過を大きく左右します。

【修正可能なリスク因子について——認知症の約45%は予防・遅延できる可能性がある】

2024年にLancet委員会が発表した報告(Livingston et al., 2024)では、高血圧・運動不足・喫煙・糖尿病・肥満・社会的孤立・うつ病・難聴・大気汚染・過度の飲酒・頭部外傷・視力低下・高LDLコレステロール・睡眠障害など、 14の修正可能なリスク因子 への対処により、認知症の約 45%は予防または発症遅延が可能 とされています。
早い段階から生活習慣を整えることの意味は、これほど大きいのです。漢方・鍼灸による体質改善は、まさにこれらのリスク因子にアプローチする有力な手段の一つです。

認知症の主な種類

認知症には複数の原因疾患があり、それぞれ症状の特徴や進行パターンが異なります。正確な鑑別診断が、その後の治療・ケア方針に大きく影響します。

1)アルツハイマー型認知症

認知症全体の 60〜80% を占める最多の原因疾患です。脳内にアミロイドβという異常タンパク質が蓄積し、次いでタウタンパク質の異常凝集が進行することで、神経細胞が徐々に失われていきます。 記憶障害(特に最近の出来事の忘れ) から始まり、判断力低下・言語障害・失認などが緩やかに進行するのが特徴です。症状の進行はゆっくりとしており、初期段階では本人も家族も気づきにくい面があります。

2)血管性認知症

脳梗塞や脳出血などの脳血管障害により、脳組織への酸素・栄養供給が障害されることで発症します。症状が 突然あるいは階段状に悪化 するケースが多く、障害を受けた部位によって症状が異なります(歩行障害・感情コントロールの困難など)。高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病が主要なリスク因子です。中医学では「血流の滞り(瘀血)」が最も強く関与するタイプといえます。漢方・鍼灸による血流改善が特に有効なアプローチとなりやすい病型です。

3)レビー小体型認知症

脳内にαシヌクレインという異常タンパク質(レビー小体)が蓄積し、神経細胞が機能を失います。 認知機能の日内変動(ある時間帯は比較的しっかりしているが、別の時間帯は混乱している)・繰り返す具体的な幻視(虫や人が見える)・パーキンソニズム(動作緩慢・筋強剛) が三大中核症状です。睡眠中に夢の内容を叫んだり暴れたりするレム睡眠行動異常症を先行して示すことがあります。薬への感受性が高いため、治療方針の選択に特に注意が必要です。

4)前頭側頭型認知症

前頭葉・側頭葉の神経細胞が選択的に変性する疾患です。比較的若い年代(40〜60代)に発症することもあり、記憶障害よりも 人格変化(常同行動・脱抑制・反社会的行動)や言語機能の障害 が目立ちます。「性格が変わった」「礼儀知らずになった」という形で気づかれることが多く、認知症と認識されにくいケースも見られます。

認知症の症状(中核症状とBPSD)

認知症の症状は大きく2つに分けられます。脳の神経細胞が失われることで直接引き起こされる 「中核症状」 と、中核症状を背景に心理的・環境的な要因が加わることで生じる 「行動・心理症状(BPSD:Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)」 です。

1)中核症状(脳の直接的なダメージによる症状)

記憶障害

  • 最近の出来事を丸ごと忘れる(食事をしたこと自体を忘れるなど)
  • 同じ話・同じ質問を繰り返す
  • 物をどこに置いたか全くわからなくなる
  • 遠い過去の記憶は比較的残りやすい

見当識障害

  • 今日の日付・曜日・年月がわからなくなる
  • 今いる場所がわからなくなる(自宅でも迷子に)
  • 身近な家族の顔・名前がわからなくなる
  • 季節感がなくなる(夏に冬服を着ようとするなど)

失語・失行・失認

  • 言葉が出てこない、言いたいことが伝わらない
  • 知っているはずの道具の使い方がわからない(失行)
  • 物が見えているのにそれが何かわからない(失認)
  • 着替え・歯磨きなどの動作ができなくなる

実行機能(遂行機能)障害

  • 計画を立て、順序立てて行動できない
  • 料理・家計管理など複雑な作業が困難になる
  • 仕事上のミスが増える(若年性の場合)
  • 判断力・問題解決能力の低下

2)BPSD(行動・心理症状)——漢方・鍼灸が特に力を発揮できる領域

BPSDは、中核症状そのものではなく、本人の不安・恐怖・混乱が行動や感情として表出したものです。 適切なケアや環境調整、そして漢方・鍼灸などのアプローチによって、症状の軽減・安定化が期待できる のがこの領域の大きな特徴です。

心理症状

  • 不安・焦燥・抑うつ
  • 幻覚(幻視・幻聴)
  • 妄想(物盗られ妄想、嫉妬妄想など)
  • 睡眠障害(昼夜逆転・不眠)

行動症状

  • 徘徊・帰宅行動
  • 易怒性・興奮・暴言・暴力
  • 食欲の変化(拒食・異食)
  • 不潔行為・収集癖
【BPSDには「薬だけに頼らない」がガイドラインの原則】

日本老年医学会等が策定したガイドラインでは、BPSDへの対応として 非薬物療法を薬物療法より優先すること が明記されています。向精神薬(抗精神病薬など)には副作用リスクもあることから、 漢方・鍼灸を含む多角的なアプローチ が、本人と介護する家族の双方にとって重要な選択肢となります。

診断基準と診断の流れ

認知症の臨床診断は、米国精神医学会の DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版) や、米国国立老化研究所とアルツハイマー協会による NIA-AA基準 が広く用いられています。

DSM-5における認知症(神経認知障害)の主な診断要件

記憶・学習、言語、遂行機能、複雑性注意、知覚・運動、社会的認知のうち、 1つ以上の領域で以前の水準から著明な低下 が認められ、かつその低下が日常生活の自立を妨げていることが要件となります。

加えて、認知機能の低下が せん妄の経過中のみに生じるものではなく、うつ病・統合失調症などの精神疾患でも説明されない ことが必要です。

アルツハイマー型については、少なくとも2つ以上の認知機能領域で緩徐に発症・進行する低下が確認されることが求められます。近年は、アミロイドPET・脳脊髄液検査・血液バイオマーカー(p-tau217など)を用いた生物学的な診断補助も普及しつつあります。

STEP 1:問診・認知機能検査

MMSE(ミニメンタルステート検査)やHDS-Rによるスクリーニング。本人・家族からの詳細な生活歴・症状の経過の聴取が重要です。

STEP 2:血液検査・画像診断

甲状腺機能低下症・ビタミンB12欠乏など、認知症に似た症状を引き起こす治療可能な疾患を除外します。MRI・CTで脳萎縮・血管病変・腫瘍などを確認します。

STEP 3:専門的バイオマーカー検査(必要に応じて)

アミロイドPET・脳脊髄液検査・血液中のp-tau217などで、アルツハイマー病の生物学的確認を行います。抗アミロイドβ抗体薬(レカネマブ・ドナネマブ)の投与には必須となります。

STEP 4:診断・治療計画の立案

原因疾患・重症度に応じた薬物療法・非薬物療法・介護サービスの計画を立案。早期診断であればあるほど、選択できる手段が増えます。漢方・鍼灸もこの段階から並行して開始できます。

発症のメカニズム(最新研究)

アルツハイマー型認知症の発症メカニズムに関する研究は、過去10年で急速に進展しています。現在の科学的理解では、単一の原因ではなく、 複数の病理プロセスが連鎖的に進行する ことで神経細胞の破壊が起きると考えられています。

1)アミロイドβの蓄積と「20年前から始まる変化」

最も重要な病理の一つが、脳内への アミロイドβ(Aβ) の蓄積です。アミロイドβは本来、脳内で産生・分解を繰り返す自然なタンパク質ですが、加齢・遺伝的要因・生活習慣の乱れなどにより分解が追いつかなくなり、「アミロイド斑(老人斑)」として神経細胞の周囲に蓄積します。

重要なのは、 アミロイドβの蓄積は認知症の症状が現れる20〜25年前から始まっている という事実です(Bateman et al., 2012など複数の縦断研究より)。つまり、60〜70代で発症する認知症の根は、40〜50代にはすでに始まっているのです。この「無症状期」への早期介入が、今後の認知症対策の核心となります。

2)タウタンパク質の異常凝集

アミロイドβの蓄積が一定以上になると、神経細胞内の タウタンパク質 が異常にリン酸化されて凝集し(神経原線維変化)、神経細胞そのものが死んでいきます。症状の重さはアミロイドβよりもタウの広がりと相関することが知られており、タウの進行が認知機能低下の直接的な指標とされます。

近年の基礎研究では、タウタンパク質が線維化する前段階の構造に注目した研究が進んでおり、 この早期段階を標的とすることで線維化の抑制が期待できる という新しい治療戦略の可能性も示されています。

3)神経炎症と脳内免疫細胞(ミクログリア)

近年特に注目を集めているのが、脳内の免疫細胞である ミクログリアの慢性活性化(神経炎症) の役割です。アミロイドβの蓄積はミクログリアを過剰に活性化させ、炎症性サイトカイン(IL-6・TNF-αなど)の放出が慢性的に続くことで、周囲の神経細胞へのダメージが拡大します。

この慢性炎症の状態は、中医学が2000年以上前から「痰濁(たんだく)」「瘀血(おけつ)」という概念で捉えてきた病態と深く重なります。脳の炎症を体質から制御するという中医学のアプローチが、現代の神経炎症研究と接点を持ちつつあります。

アミロイドβ蓄積

神経細胞外に蓄積する異常タンパク質。発症の20〜25年前から蓄積が開始。「早期予防」が最も重要なポイント。

タウの異常凝集

神経細胞内で線維化し細胞を死滅させる。蓄積の広がりが認知機能低下の重症度と直接相関する。

慢性神経炎症

ミクログリアの過剰活性化による持続的な炎症。神経細胞死を加速させ、中医学の「痰濁・瘀血」と対応する。

現代医学的治療とその限界

現在の認知症治療は、症状の安定・進行抑制を目的とする薬物療法と、BPSDに対応する非薬物療法が組み合わされています。2023〜2024年には画期的な新薬も登場しましたが、それでも「根本的な治癒」にはまだ届いていないのが実情です。

  • コリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジル・リバスチグミン・ガランタミン): アルツハイマー型・レビー小体型の中核症状に用いられます。神経伝達物質アセチルコリンの分解を抑えることで認知機能を維持しますが、症状の進行そのものを止めるものではありません。
  • NMDA受容体拮抗薬(メマンチン): 中等度〜高度のアルツハイマー型に使用されます。グルタミン酸の過剰刺激による神経細胞死を抑制するとされますが、効果には個人差があります。
  • 抗アミロイドβ抗体薬(レカネマブ・ドナネマブ): 2023年9月に「レカネマブ(レケンビ)」が国内で製造販売承認を取得し、同年12月に発売されました。続いて2024年9月に「ドナネマブ(ケサンラ)」が国内で承認されました。臨床試験では認知機能悪化をそれぞれ約 27%・35%(低/中タウ群)抑制 したことが示されています。ただし、 対象はMCI〜軽度認知症に限られ、症状の完全な停止や回復には至らない 薬です。また脳浮腫・脳出血(ARIA)という副作用リスクがあり、すべての方に使えるわけではありません。
  • BPSDへの薬物療法(抗精神病薬・漢方薬など): 易怒性・興奮・幻覚・睡眠障害などのBPSDに対して検討されますが、ガイドラインは 非薬物療法を優先することを明記 しています。漢方薬「抑肝散」は、日本老年医学会ガイドラインでもBPSDへの有効性が言及されており、副作用の少ない選択肢として注目されています。
【現代医学が直面する壁——そして漢方・鍼灸が担える役割】

新薬の登場は大きな進歩ですが、「発症後」に使える薬としての限界は依然として存在します。現在世界で活発に研究されているのは、 無症状期(発症前)の段階にいかに介入するか という予防医学的アプローチです。

体の「巡り・バランス・底力」を整え、病態が進行しにくい体質をつくるという中医学の考え方は、まさにこの方向性と一致しています。漢方・鍼灸は西洋薬を補完する形で、幅広い段階でご活用いただけます。

中医学から捉える認知症の病態

中医学では、認知症を単なる脳の老化現象とは捉えません。「五臓(特に腎・心・脾・肝)のバランスの乱れ」と「気・血・津液(水分)の滞りと不足」が複合的に生じた状態として分析します。

中医学の古典にも「健忘(けんぼう)」「癡呆(ちほう)」と記述された病態が記録されており、2000年以上にわたって積み重ねられた観察と治療の経験があります。現代医学との対比でいえば、脳の動脈硬化・微小循環の障害・神経炎症・神経栄養因子の不足——これらすべてが中医学の病態概念と深く重なります。

中医学の考え方・基本 中医学では、「体のエネルギー(気)」「血液・栄養(血)」「体内の水分(津液)」が全身を巡ることで健康が保たれると考えます。これらの「巡り」が滞ったり、量が不足したりすると、さまざまな病態が生じます。認知症もその一つです。以下の4つの概念は、それぞれ現代医学の病態と対応しており、漢方・鍼灸の処方選択の根拠となります。
おけつ
1)瘀血

血液の循環障害・微小循環の慢性的な滞りの状態。脳動脈硬化・脳梗塞後の血管性認知症に最も強く対応します。頭部への栄養・酸素供給が途絶えることで神経細胞が傷つきます。肩こり・頭痛・顔色がくすむ・唇の色が悪いなどが随伴することがあります。

わかりやすく言うと 「血液がドロドロになって、脳まで届きにくくなっている状態」です。現代医学でいう脳循環不全・慢性炎症・動脈硬化に対応します。高血圧・脂質異常症・糖尿病などがある方に多いパターンです。
じんきょ
2)腎虚

生命の根本エネルギーである「腎精(じんせい)」が加齢によって衰えた状態。中医学では「脳は髄の海(腎精が満たす器)」とされており、腎精が衰えると脳の機能が低下するとされます。アルツハイマー型の神経細胞数の減少・脳萎縮と対応します。足腰のだるさ・耳鳴り・頻尿・物忘れの悪化などが随伴します。

わかりやすく言うと 「体の根本的な生命力・老化に抵抗する力が衰えた状態」です。現代医学でいう神経細胞数の減少・脳萎縮・神経栄養因子の低下と対応します。加齢に伴い誰でも進行しますが、その速度は体質や生活習慣で変わります。補腎剤(八味地黄丸など)でこのエネルギーを補います。
たんだく
3)痰濁

水と脂質の代謝障害によって体内に生じた病理産物「痰湿(たんしつ)」が脳に詰まった状態。脂質異常症・動脈硬化・脳内アミロイド斑の蓄積と対応します。正常な精神活動を妨害する「詰まり」として捉えます。肥満・むくみ・胸苦しさ・思考が重だるい感じなどが随伴します。

わかりやすく言うと 「代謝できなかった老廃物が体内に蓄積し、脳の働きを妨げている状態」です。現代医学でいう脂質異常症・動脈硬化・アミロイド斑の蓄積に対応します。太りやすい体質・むくみやすい方に多いパターンです。
きけっきょ
4)気血虚

脳と全身を養う「気(エネルギー)」と「血(栄養)」が絶対的に不足した状態。神経栄養因子(BDNFなど)の不足・全身の低栄養状態と対応します。認知症患者に多く見られる食欲低下・体重減少・気力の消失・睡眠の質の低下と密接に関連します。虚弱体質・顔色不良・息切れなどが随伴します。

わかりやすく言うと 「体全体を動かすエネルギーと、細胞を養う栄養が足りていない状態」です。現代医学でいう低栄養・神経栄養因子の不足・免疫力低下に対応します。高齢でやせ型・食が細い方に多いパターンです。帰脾湯・人参養栄湯などで補います。

臨床的には、これら4つの病態要素は単独ではなく複雑に絡み合っています。「腎虚が進むと痰濁が溜まりやすくなる」「瘀血と痰濁が重なると症状が悪化しやすい」といった相互作用があります。タナココでは一人ひとりの体質・症状・随伴する不調を詳しくお聞きした上で、複合的な状態を分析し、最適な処方・施術をご提案します。

認知症への漢方・鍼灸アプローチ

漢方薬による体質ケアと症状サポート

認知症に対する漢方薬の活用には、大きく2つの方向性があります。一つは BPSDの安定化 、もう一つは 認知機能の維持・低下の緩和 を目的とした体質改善です。

漢方薬 主な対象とする病態(中医学) 主な使用場面・エビデンス
抑肝散
よくかんさん
肝の気の高ぶり(肝陽上亢)、神経の過緊張 BPSDの易怒性・興奮・幻覚・妄想・昼夜逆転への有効性が複数の臨床試験で報告。日本老年医学会ガイドラインにも言及あり。 エビデンス豊富
八味地黄丸
はちみじおうがん
腎虚(腎陽虚)/加齢による生命力の衰え 認知機能の進行抑制を示す研究報告あり。軽度アルツハイマー病患者を対象とした臨床試験も実施。足腰のだるさ・頻尿を伴う方に。 臨床報告あり
六味丸
ろくみがん
腎虚(腎陰虚)/ほてり・口渇を伴う場合 八味地黄丸から温める生薬を除いたもの。のぼせやほてりが目立つ腎陰虚タイプに使用。 経験的使用
帰脾湯・加味帰脾湯
きひとう
気血虚(心脾気血虚)/気力・血の不足 アルツハイマー型認知症患者への投与で認知機能の維持を示した少数例の報告あり(特に見当識・注意力)。食欲低下・不眠・疲弊感がある方に。 少数例報告
人参養栄湯
にんじんようえいとう
気血虚/低栄養・体力低下 高齢・虚弱・食が細い方の体力補強。神経栄養因子(NGF)増加作用の基礎研究報告あり。 臨床報告あり
釣藤散
ちょうとうさん
瘀血・痰濁・肝陽上亢 高血圧・頭痛・めまいを伴う血管性認知症・脳血管障害に伴う認知機能低下への活用が報告。脳循環改善・神経保護作用の研究あり。 臨床報告あり
桂枝茯苓丸
けいしぶくりょうがん
瘀血(血流の滞り) のぼせ・肩こり・頭痛・下腹部の張りなどを伴う瘀血タイプの血流改善に。 経験的使用

※エビデンスの強さは現時点での研究蓄積を参考に表示しています。漢方薬の選択は個人の体質・病態・服用中の薬との兼ね合いを考慮して行います。複数の処方が複合的に効果を発揮する場合もあります。

漢方薬は複数の生薬が連携して働くため、一つの処方が複数の病態に同時にアプローチします。また、個々の状態に合わせた細かな調整がしやすいのも漢方の強みです。タナココでは状態に応じてエキス製剤または煎じ薬をご提案します。

鍼灸による脳循環・自律神経・BPSDへのアプローチ

認知症への鍼灸の効果に関する研究は世界的に増加しています。複数のシステマティックレビューやメタ解析が国際学術誌に発表されており、 アルツハイマー型・血管性認知症への認知機能改善やBPSD改善の可能性 が示されています(Liang et al., 2024ほか)。現時点では研究数がまだ限られており、効果には個人差があることをご承知おきください。

中医学的には、脳への気血の流れを司る 「腎・心・脾・肝の経絡」 を調整することで、脳循環の改善・自律神経の安定・神経栄養因子の分泌促進を目指します。

よく用いるツボの例

百会 (ひゃくえ)
頭頂部。脳への気血の流れを整え、精神安定・認知機能の賦活に用います。
印堂 (いんどう)
眉間の中央。精神活動の安定・不眠・不安の軽減に用います。
内関 (ないかん)
手首の内側。心臓・脳への血流調整、精神安定、吐き気の緩和に用います。
足三里 (あしさんり)
膝下の外側。全身の気血を補い、消化吸収・免疫・体力増強に広く用います。
三陰交 (さんいんこう)
内くるぶし上。肝・脾・腎の3経絡が交わるツボ。血流改善・不眠・腎虚に用います。
太渓 (たいけい)
内くるぶし後方。腎の原穴。腎虚タイプの認知機能低下・耳鳴り・頻尿に用います。

BPSDの安定(睡眠改善・焦燥感の軽減・興奮の緩和)においても、鍼灸による自律神経の調整が介護負担の軽減につながるケースが報告されています。施術は無理のない体位で、ご本人の体力・状態に合わせてやさしく行います。

タナココでは、現在服用中の薬・認知症の種類・重症度・BPSDの内容・体力・消化器の状態などを総合的に把握した上で処方・施術を組み立てます。 薬剤師の国家資格を有するスタッフが薬の相互作用を確認しながら提案する ため、現在病院で治療を受けている方も安心してご相談いただけます。「まず話を聞いてほしい」というご相談から、ぜひお気軽にご連絡ください。

よくある質問(FAQ)

認知症と物忘れ、どこが違うのですか?
通常の加齢による物忘れは、体験の一部を忘れます(例:昨日の夕食のメニューが思い出せない)。一方、認知症の記憶障害は体験そのものが丸ごと抜け落ちます(例:昨日夕食を食べたこと自体を覚えていない)。

もう一つの目安は「自覚があるかどうか」です。通常の物忘れは「最近忘れっぽいな」という自覚がありますが、認知症では忘れたこと自体に気づかないことが多くなります。

また、認知症では記憶障害だけでなく、判断力・見当識・言語機能など複数の認知機能が同時に低下し、日常生活に支障をきたす点が特徴です。心配な場合は早めに専門医への受診をお勧めします。
新薬レカネマブ・ドナネマブについて教えてください。
「レカネマブ(レケンビ)」は2023年9月に国内承認・同年12月発売、「ドナネマブ(ケサンラ)」は2024年9月に国内承認された、アルツハイマー病の原因物質アミロイドβを脳から除去する抗体薬です。臨床試験ではそれぞれ認知機能悪化をおよそ27%・35%(低/中タウ群)抑制したことが示されました。

ただし対象はMCI(軽度認知障害)〜軽度認知症に限られており、症状を「治す」薬ではなく「進行を遅らせる」薬です。また脳浮腫・脳出血(ARIA)というリスクがあり、使用には画像検査による確認と厳格な管理が必要です。すべての方に使えるわけではありません。

これらの薬と漢方・鍼灸は並行してご活用いただけます。
認知症に漢方薬・鍼灸は効果がありますか?
漢方薬については、BPSDの改善を目的とした「 抑肝散 」の有効性が複数の臨床試験で確認されており、日本老年医学会ガイドラインでも言及されています。「 八味地黄丸 」については認知機能の進行抑制を示す研究報告があり、軽度アルツハイマー病患者を対象とした臨床試験も行われています。「 帰脾湯 」については少数例の臨床報告があり、「 人参養栄湯 」については神経栄養因子に関する基礎研究報告があります。

鍼灸については、認知機能改善やBPSD改善の可能性を示した研究が国際的に蓄積されつつあります。まだ大規模なエビデンスが限られている領域ではありますが、研究の進展とともに注目が高まっています。

タナココでは効果を過大に約束することなく、現実的な目標設定のもとでサポートします。
病院の薬と漢方・鍼灸は一緒に使えますか?
はい、コリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジルなど)・メマンチン・抗アミロイドβ抗体薬と並行して、体質を整える目的でご活用いただけます。

タナココでは 薬剤師の国家資格を有するスタッフ が、現在服用中の薬の内容・相互作用を十分に確認した上で、安全性に配慮した漢方処方をご提案します。主治医へのご報告を前提に、透明性のある形での連携を大切にしています。
介護している家族として相談することはできますか?
もちろんです。タナココでは、ご本人だけでなく、介護をされているご家族からのご相談も大切にしています。

「どんな漢方薬が合うか」「鍼灸を受けさせてあげたい」といったご質問から、「どう対応すればよいか」「自分自身も疲れてしまっている」というご相談まで、幅広くお聞きします。

介護される方の心身の状態が、認知症の方本人のBPSDにも大きく影響することは、ガイドラインでも明記されています。ご家族の体と心を整えることも、大切なケアの一部です。
認知症の予防に漢方・生活習慣改善は意味がありますか?
はい、大きな意味があります。2024年のLancet委員会報告(Livingston et al., 2024)では、修正可能な14のリスク因子への対処により、認知症の約45%は予防または発症遅延が可能とされています。

中医学では、高血圧・脂質異常症・糖尿病・睡眠の乱れ・慢性疲労などのリスク因子の多くが「瘀血・痰濁・腎虚の進行」と密接に関連していると捉えます。漢方・鍼灸による体質改善はこれらへの予防的アプローチとして機能します。

「まだ認知症ではないけれど、年齢的に心配」という段階こそ、取り組みを始める最適なタイミングです。
若年性認知症について教えてください。
若年性認知症とは、65歳未満で発症した認知症の総称です。働き盛りの世代で発症することが多く、仕事でのミスの増加・性格の変化・意欲の低下などで気づかれるケースがあります。原因疾患はアルツハイマー型が最多ですが、血管性・前頭側頭型なども含まれます。

高齢者の認知症と病態の本質は同じですが、就労・育児・家計への影響が大きいため、早期発見と早期対応が特に重要です。「若いから認知症ではない」とは思わず、気になる症状があれば早めにご相談ください。

「今できることを、一つずつ」
一緒に考え、体質から整えていきましょう

認知症は、ご本人もご家族も、長い時間をかけて向き合い続ける病気です。完全な治癒を約束できる手段は、現代医学にも中医学にもまだ存在しません。しかしだからこそ、今ある選択肢をすべて知った上で、できることを積み重ねることが大切だとタナココは考えています。

薬だけでは届きにくいBPSDの安定化、日常生活の質の維持、介護する家族の心身の疲弊の軽減——漢方・鍼灸が担える役割は決して小さくありません。特にBPSDへの対応や、予防・早期段階での体質改善は、漢方・鍼灸が最も力を発揮できる領域の一つです。

「どこから始めればいいかわからない」という方も、まずはお話を聞かせてください。 国家資格を有する薬剤師・鍼灸師 が、西洋医学の知見と中医学の視点を統合しながら、あなたとご家族の状況に合わせた、現実的なご提案をします。

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