新型コロナと中医学・漢方(清肺排毒湯など)

こんにちは、相模原タナココ漢方薬局・鍼灸接骨院です。

漢方のお問い合わせが増えておりますが、清肺排毒湯やその他の漢方については下記よりお問い合わせください。

問い合わせ 相模原 漢方薬局 鍼灸 接骨院

 

PCR陽性の報告数が増えてきました。4月にも200名を超えましたが、その時と陽性率が全く異なるので同じ状況とは言えませんが、このことは安心材料にはなりません。

また、増加傾向はしばらくは続くと思われます。

 

引き続き緊張感を持って生活をしなければなりません。

 

現在は若い年代の感染者が多いようですが、高齢者に感染が広がり始めるといよいよ大変な状況になってきます。

 

医療も逼迫します。

 

陽性者数が増えると漢方の問い合わせが増えますが、ワクチンや特効薬がない状況では、漢方は有効な対応の1つです。

 

漢方といえば中国が本場ですが、中国でも今回の新型コロナウイルス感染症に漢方が積極的に使用され、清肺排毒湯のような処方が作られるまではとても大変でした。

 

当時の中国で漢方が使われるようになった流れを振り返って見たいと思います。

 

 

実は中国でも、医療の中心は西洋医学です。もちろん日本にはない中医薬大学があったり、医師資格の中に「中医師」があったりするので、日本よりは「医療」や「学問」という意識は高いと思います。

 

中国では中医学がすべての人に受け入れられているかというとそうではありません。

効かないもの、怪しげなもの、肝機能を悪化させるからやめたほうが良いとい西洋医師もいます。中国でも西洋医師の間にはこのような認識があるのが現状です。

 

日本でも同じような医師もいますね。

 

新型コロナウイルス感染症が拡大した時期に、武漢市の伝染病専門病院である金銀潭病院は新型コロナウイルス感染症の患者さんを数多く収容した病院ですが、ここは西洋医学の病院でした。そのため中医学治療は当初行われませんでした。

 

当時は西洋医学の病院での中医学と西洋医学を合わせて行うことはかなり大変だったようです。

 

なんとか中医師と西洋医師をつなぐことができないかと考えた結果、活躍したのがネットツールです。

 

SNSで中医師と西洋医師をつなぎ、医師同士が離れていればネットでカンファレンスを開いたりして、西洋医師に中医学的な考え方がわかりやすいように弁証を整理しました。

 

また回診を一緒に行ったりしてコミュニケーションが円滑になるように工夫したりもしました。

 

このように密に連携をとることで次第に中医学への理解が深まっていったようです。

 

また、中医学の四診(望診(ぼうしん)、聞診(ぶんしん)、問診( もんしん)、切診(せっしん))は患者さんとのコミュニケーションを取る上で有効だったとしています。患者さんからの信頼の厚さも西洋医師の認識を変える1つの要因でした。

 

四診とは

望診:視覚を用いた診察(顔色、皮膚の色の他、舌の様子を見る舌診など)
聞診:聴覚と嗅覚を用いた診察(声の大きさ、においなど)
問診:現病歴や既往歴だけでなく、患者の体質や傾向などの質問
切診:脈の状態や腹部の抵抗感や圧痛の有無などを確認

というものですが、入院下では全体を診る中医学的診察は患者さんの心の支えにもなったようです。

 

実際の治療では、新型コロナウイルス感染症では「痰」が細い気管支に詰まることが大きな問題になっていましたが、漢方を使うことでその詰まりを改善させて治療に貢献したことも信頼関係を築くのに役立ったとしています。漢方のこのような効果を目の当たりにすることで治療で中医学が次第に受け入れられたようです。

 

漢方が受け入れられるまでには、現場では相当の苦労がありました。

 

最終的には感染が確定した9割の患者さんに漢方治療が行われたとのことです。

 

実際にどのような処方が使われたかというと「三方三薬」という言葉がありますが、
・清肺排毒湯
・化湿敗毒方
・宣肺敗毒方
を三方
・金花清感
・連花清瘟
・血必浄
を三薬とし、これらがよく使われましたようです。

 

特に「清肺排毒湯」は救いの処方の一つとなりました。

 

2月18日には新型コロナウイルス肺炎のガイドライン第6版(新型冠状病毒肺炎诊疗方案(试行第六版))が発表され、翌日に当ブログでもご紹介しましたが、紹介直後から問い合わせが急増しました。

清肺排毒湯の後ろ向きな検討による報告があります。

98名に9日間清肺排毒湯を服用してもらいました。軽症は54名、普通型は33 名、重症および重篤例は11 名で、うち男性は 52 名、女性は 46 名、平均年齢 42.06±17.39歳でした。

服用6日後にはCRPとESRは正常化、CT画像は79名で改善、服用期間が9日間になると多くの検査項目で有効率が90%を超えました。短期間に多くの症状の改善したのです。

この成績には多くの医療従事者が驚きました。

 

清肺排毒湯は麻杏甘石湯+射干麻黄湯+小柴胡湯+五苓散 ±αですが、これは日本の処方にはないのでツムラのエキスでなんとか近くなるように多くの方が苦労されていましたが、煎じ薬の方が調整しやすく、ほぼ同じ内容に近づけることができました。

 

麻杏甘石湯、五苓散は寒閉、湿を取り除きます。

小柴胡湯で三焦と通利、射干麻黄湯で宣肺し呼吸器症状を改善します。

藿香も良い働きをしました。芳香化湿する重要な生薬です。

石膏も症状により加減をして用いる必要がありました。鬱熱発生を予防し、高熱を抑制します。熱がなければ少なく、高ければ多く使用します。

 

また、漢方に馴染みのない方は清肺排毒湯の注意点として「漢方服用後のおかゆ」は不思議だったのではないでしょうか。

 

「おかゆ」に関しては傷寒論を勉強された方は「ああ、あれね」と思っていただけると思いますが、桂枝湯の項目に以下のような内容があります。

 

桂枝汤:桂枝三两(去皮),芍药三两,甘草二两(炙),生姜三两(切),大枣十二枚(擎)。
上五味、㕮咀三味、以水七升、微火煮取三升、去滓、适寒温、服一升。服已须臾、吸热稀粥一升余、以助药力。温覆令一时许、遍身漐漐微似有汗者益佳;不可令如水流漓、病必不除。若一服汗出病差、停后服、不必尽剂。若不汗、更服、依前法;又不汗、后服小促其间、半日许令三服尽。若病重者、一日一夜服、周时观之。服一剂尽、病证犹在者、更作服;若汗不出、乃服至二三剂。禁生冷、黏滑、肉面、五辛、酒酪、臭恶等物。

 

上記を日本語にすると


桂枝湯:桂枝三両(去皮),芍薬三両,甘草二両(炙),生姜三両(切),大棗十二枚(擎)。
以上5味のうち、前3味をきざみ、水7升(1.4L)を用い、微火で3升(600mL)まで煮立て、残滓を除き、適切な温かさで1升(200mL)を飲む。飲み終えて間もなく、熱い薄粥を1升(200mL)あまりをすすり、薬効を助け、さらに約1時間の間ふとんをかぶり、全身から汗がにじみ出るようにするとよい。決して水がながれるように汗を出してはならない。もしそのようにするとかえって病気はよくならない。もし1服で汗がでて病気がよくなったら後は飲む必要がなく、1剤を全部飲み尽くす必要はない。もし服薬後汗が出なかったら、もう1度前のように継続して服用すると良い。それでもまだ汗が出ない場合、後で飲む分は時間を短縮して半日ばかりの間に3服を飲み尽くすようにする。もし病変が重症の場合は病変の経過を見ながら1昼夜飲み続けても良い。1剤を飲み終わっても病証が依然存在しているようなら、さらに新しく作ると良い。もし汗が出ない場合は、2、3剤続けて飲んでも良い。生もの、冷たいもの、粘っこいもの、肉類、麺類、五辛(にんにく、にら、ねぎ、うんたい、こすい)、酒、乳製品、悪臭のものなどは禁忌である。

となります。

 

感染症の影響(熱など)で津液不足(水分不足)にならないようにという配慮からの飲み方で、これにならい清肺排毒湯の服用後はお茶碗半分のおかゆを飲んで、それでも水分不足があればお茶碗1杯のおかゆを追加で飲む・・・となったわけです。

 

このほか、金花清感、連花清瘟も問い合わせが多い漢方でした。

 

日本では販売されていない漢方薬ですので、近づけた内容でお作りしていますが、中国では発熱が軽度で頭痛がつらいような場合は金花清感、高熱で便が乾燥しているような場合は連花清瘟などを使い分けていたようです。

 

このような経緯で清肺排毒湯をはじめ、金花清感、連花清瘟などの漢方が新型コロナウイルス感染症に積極的に使用されるようになったわけですが、その経緯は中国といえど未知のウイルスに対して初めからしっかりと中医学が運用されたわけではありません。

 

一部、一律に使うことは好ましくない、一人ひとり加減すべきだ、全部入りで節操がない処方だという批判もありましたが、混乱の中にあっても基本の病因病機をとらえ、複雑にならないようにいくつか共通処方を作成し、大規模に運用できるような仕組みを作ったのはとてもすごいことだと思います。

 

また、重症者を増やさないように軽症者と擬似症例に早期の中医学的な介入も行い成功させました。

 

1月の末に武昌区政府・湖北省中医院が広範囲に漢方を配布することを決定し、2月3日には煎じ薬が配られ始めました。弁証も大雑把なものでしたが、核心となる症状別に4つの処方を作成しました。

 

その後、顆粒剤の製造が追いつくとさらに広範囲に配布することができるようになり、最終的には70万人以上に配布されたようです。

 

「寒湿疫方」と呼ばれるこの処方は、自宅待機の発熱している感染者、隔離された擬似患者、早期の陽性患者が対象でした。

 

721名のうち「寒湿疫方」を使用した430名では1人も悪化せず、対照グループの291名では19名で重症化し、重症化予防に効果的であったとの報道がありました。

 

本来はひとり一人異なるはずの処方を、最大公約数的な処方へ落とし込み、できるだけ簡便な加減の方法をつくり、漢方薬のメリットを損なわずに運用できたようです。

 

このほか、鍼灸・推拿などの外治法も取り入れられ、呼吸器症状の改善にも効果を上げていました。上海中医薬大学の岳陽中西医結合病院からも鍼灸治療を行う医師が派遣されていたようです。

 

その後は重症例にも漢方が試みられるようになり、そこでも一定の効果がみられました。

 

記者会見でも西洋医学で難しいケースでも中医学で対応できることがあり、有効だったというコメントも聞かれるようになりました。

 

世界の医学の中心は西洋医学です。

しかし、西洋医学だけが医学ではありません。

よく「漢方はエビデンスが少ない」といわれます。

確かに西洋薬に比べれば漢方薬はエビデンスが少ないですし、あっても高いエビデンスがあるものは少ないです。エビデンスは西洋医学のフィールドですので当然です。

中医学のフィールドで言えば、「西洋医学は患者さんの全体を診ないから根本治療にならない」となります。

 

しかしお互いに苦手なところを指摘しあっていてはつらい症状に悩んでいる方のためにはなりません。苦手なところを補いながら、それぞれの良さを発揮できるような医療環境が整えていくことが重要なのではないでしょうか。

 

中国でさえこのような状況ですので、日本で中西医結合医療進めていくのは難しいかもしれませんが、難しいことは進めない理由にはなりません。

 

日本でも中国とは違う形ではありましたが、漢方で対応する場面は多かったと思います。

 

未だ新型コロナウイルス感染症の厳しい状況は続いています。予防と治療における漢方やの役割はさらに重要になります。

 

西洋医学と中医学を融合させた治療、お互いのメリットを活かした治療で、感染拡大に貢献していければと思います。

 

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