投薬ミス(東京女子医大のケースについて)

こんにちは、相模原 タナココ漢方薬局・鍼灸接骨院です。

 

東京女子医大に賠償命令 患者死亡、投薬ミス認定―東京地裁

今日、ご来局いただいた方からご質問をいただいたので少し解説です。


投薬ミスとなったのは成分名が「ラモトリギン」、製品名が「ラミクタール」というてんかんの薬です。

16倍の量を投与されていたとのことですが、量としては1日200mg投与されていたとのことです。


ラミクタールは少々注意が必要な薬です。併用薬により服用の仕方が変わりますし、維持量まで時間をかけてゆっくり増量していく薬です。副作用予防のために必要ですので、以下のように決まりがあります。

 

ラミクタール、ラモトリギン、併用薬

 

ラミクタール、ラモトリギン

 

併用薬を見落とすと大変なことになりますので、服用の経緯が見えにくい場合や、いろいろな科を受診していたりする場合は慎重に確認します。

 

16倍で200mgということは、12.5mgを基準に考えているようですので、上記のうち25mg隔日が該当するかとおもわれます。おそらく「青」のグループの薬を飲んでいたところに、ラミクタールが追加されたのだと思います。

少しずつ増やしていく薬で、上の図では最終的には100〜200mgが維持量になります。

けいれん発作があった8月20日から、使用していた薬に加えて抗てんかん薬「ラミクタール」が処方され9月に亡くなったとのことですので、最終的に服用していた200mgが問題というよりは、おそらく、上記の投与スケジュールを守らずに200mgまで増量したのではないのでしょうか。

200mgにたどり着くにも最低でも6週間かかります。「添付文書に書かれた量の16倍」と報道がありましたが、初期量と維持量を混在させているのでしたらミスリードです。もちろん量は守っていても投与スケジュールを守っていなかったとしたらそれは問題です。

 

薬剤師が指摘したにもかかわらず、見直しをしなかったようですし、遺族側が説明はなかったとしていますので、入院時の服薬指導がされていたのかどうかも気になります。(入院なのか外来での治療なのかは記事からはわかりません・・・。「入院」については記載がなかったので外来で処方されていたのかもしれません。)

2014年では女子医大では入院中の服薬指導が行われていなかったのかもしれませんが、ラミクタールは発売当初から重篤な皮膚障害の注意があったと記憶していますので、もし服薬指導が行われていれば、皮膚障害について説明がなかったというのは通常ではありえないことです。

もし院外処方で投薬を受けていたのでしたら、皮膚障害については説明を受けているはずです。知らなかったのであれば、院外薬局の責任も少なからずあるかもしれません。

 

現在では注意喚起が行われていますので説明がおろそかになることはないと思います。

ラミクタール、ラモトリギン、副作用

薬の説明については何をどこまで説明するかというのは、非常に難しく感じる部分です。

 

原因医薬品の説明責任を明確に認定した司法判断があります。

 1996 年 2 月 18 日に出された高知医大 TEN 事例の高松高裁判決です。

アレビアチンとフェノバルビタールというけいれん予防のために処方されていた薬によってTEN(中毒性表皮壊死症)という重症の皮膚障害が起こりました。

「医師は退院の際に『何かあればいらっしゃい』との注意をしただけであって、副作用を念頭においた具体的な指導を行わなかったのであるから、医師には患者の退院時の情報提供義務(療養指導義務)を怠った過失が認められる」と認定したものです。

たとえ極めて稀であっても重篤な副作用の可能性のある医薬品の処方に際して医療関係者(医師、歯科医師、薬剤師)は患者に対し、副作用について十分な説明義務を有するという、初の司法判断で当時は話題になりました。

極めて稀な危険性については説明を要さないというそれまでの医療の現状を大きく変えた判決です。

控訴審で被告側は「一般的に薬疹の発症率は1.1%,薬疹患者のうち TEN を発症するのは 0.2% にすぎない.従って薬剤を投与して TEN を発症する確率は 0.0022%(=TEN の発症率は投薬者百万人当たり22 人)であって極めて低く、死亡や重篤な後遺症等の重大な結果の発症が一定の蓋然性をもって予測されるとはいえない場合であって、医師の重大な説明義務違反は存在しない 」と反論しましたが認められませんでした。

薬をもらう時に怖く感じる副作用についても説明があるのは、上記の判決が背景としてあります。可能性が低くても重大な副作用につながるようなものについては、この判決を境にして増えました。その後類似の裁判が行われ、現在のような説明様式が確立されました。

 

今回は上記の内容とは異なる面もありますが、説明もせず、投与量やスケジュールを守らず、指摘を受けても処方を変えなかったのであれば、かなりひどい状況です。

薬の説明については「わかってるよ」ということであっても、改めて確認しなくてはならないこともありますし、時間をいただいて十分に説明しなければならないこともあります。

 

すこし話が逸れましたが、今回は避けられた可能性が高いだけに非常に悔やまれます。また、地裁の判決が出るまで約6年もかかっているのも、ご遺族には辛かったと思います。

医療裁判の長期化を避ける仕組みづくりの必要性も改めて強く感じました。

 

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